行人 (定本 漱石全集 第八巻)
行人 (定本 漱石全集 第八巻) / 感想・レビュー
ぐうぐう
かなり風変わりな小説だ。主人公の兄は、妻に疑念を持っている。妻は弟(主人公)に惚れているのではないか、と。そこで兄は主人公に、ある提案を持ちかける。妻と二人っきりで旅行し、妻の節操を試してほしい。なんとも大胆な展開だ。『行人』は、単に夫婦間の不信の問題を描いているのではない。兄は主人公にこう吐露する。「あゝ己は何うしても信じられない。何うしても信じられない。たゞ考えて、考えて、考える丈だ。二郎、何うか己を信じられる様にして呉れ」(つづく)
2017/08/21
saga
友達の女性に対する気持ち、兄の嫂に対する気持ちを主人公が感じたはなし。 嫂と主人公が一晩をともにした展開がこの話の一番のヤマ場か。 物語が流れるような雰囲気が読んでいて心地よかった。
2019/09/23
鯉二郎
「行人」は文庫で一度読んだことがある。定本全集発行に合わせて久しぶりに再読した。他人の心はわかるようでわからないし、他人を所有したくても出来ない。普通の人はある程度のところで見切りをつけて断念するが、万事に研究心のある一郎はそうはいかない。どうしても人の心を知ろうとし、他人を所有しようとする。それがうまくいかないから苦悩は一層深まり、まるで砂の中に踊り狂う泥鰌のように身悶えする。人々が何世紀もかけて到達する真理を自分だけで理解しようとする一郎と、無表情かつ無感情の妻との対比が痛々しい。
2017/12/30
かずみ@スマホ
兄ちゃん難儀な性格やなあ。兄嫁も気が強い。
2021/08/05
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