ベルリン1919 赤い水兵(下) (岩波少年文庫)
ベルリン1919 赤い水兵(下) (岩波少年文庫) / 感想・レビュー
ヘラジカ
この物語の少年少女は暗黒の時代によって否応なく苛烈な大人の世界へと引きずり込まれてしまう。子どもが子どものまま、子どもの世界を冒険するような児童小説とは一線を画する。少年文庫とは言っても、どの年齢の人間が読んでも痛みを感じる作品だろう。綺麗な結末のない物語は当然のように現実的で、続く2部・3部の年代を考えると益々辛い読書になりそうだとため息が出る。それでも一家の行く末、彼らがどのような視線で歴史を見つめるかが気になって読まずにはいられない。名作。第二部の主人公は成長したハンス坊やか…生き延びて良かった。
2020/02/19
kawa
第一次大戦終了直後のベルリンにおける帝政崩壊後の社会革命運動の様子、社会民主党、独立社会民主党、共産党三つ巴の内紛を描く。この時の混乱が、後のナチの台頭、第2次世界大戦につながったと言われる。上巻の感想にも記したが、全体に児童書、記録文学に徹した故か平板な展開が続き読みに苦戦。内容は非常に興味深いゆえに、ちょっと残念。(中学生対象児童書)
2022/03/11
しゃん
第一次世界大戦が終わり、どのようにしてワイマール共和国ができたのかについて全く知識がなかったので、これを読んで参考になった。上巻に増して、ゲープハルト家の貧困、病気、寒さが痛くて、読んでいてつらい。生存するだけで必死の状態(でも、そんな中にあってもクリスマスの一幕はほっとさせられる)。そのなかで、13歳のヘレは弾薬を運んだりと危険な仕事を行う。また、彼は知り合った人々の死に直面したりする。戦争が子供たちにいかに悲惨な状況に陥れるのか、それは今も変わらないと考えさせられた。
2020/09/14
呼戯人
1918年11月から1919年1月にかけて、ドイツ革命の蜂起によって皇帝が追い出され、労働者や兵士たちの平和への夢が叶うかに見えた冬。ベルリンの貧困街で暮らす労働者の息子ヘレが社会民主党による反革命の暴力により、弾圧を受け資本と軍が復活する中で、友達や兵士や教師などの人間関係も入り乱れ、内乱へ陥ってゆくベルリンの暮らしに苦しむ。カール・リープクネヒトやローザ・ルクセンブルグが虐殺され、スパルタクス団は窮地に追い込まれる。淡い恋も成就せず、しかしそれでも力強く生き続けてゆく姿を描く。
2020/04/12
特盛
評価3.7/5。名もなき一族を巡る長い物語が好きだ。人生が受け継がれ、受け継いだ方もまた次にバトンタッチをし、名もなく死んでいく。本作はドイツで最も貧乏な階級で、戦争と貧困にさいなまれ続ける一族を追う三部作の第一部だ。ドイツでWW1敗戦から11月革命(帝国解体)、その後の内戦について本作で触れての率直な印象は、「主人公たち、ハードモードすぎる。今の自分はなんというフリーライダーなのか」だった。ありがたくも、そして何か申し訳ない気持ちにもなる。まだ不幸は続く。次はナチ党が政権を握る過程が舞台の第二部だ。
2024/03/18
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