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ベルリン1945 はじめての春(下) (岩波少年文庫 626)

ベルリン1945 はじめての春(下) (岩波少年文庫 626)

ベルリン1945 はじめての春(下) (岩波少年文庫 626)

作家
クラウス・コルドン
酒寄進一
出版社
岩波書店
発売日
2020-07-15
ISBN
9784001146264
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ベルリン1945 はじめての春(下) (岩波少年文庫 626) / 感想・レビュー

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ケイトKATE

やがて、ヒトラーの死によって第三帝国が崩壊したことで、ヘレは解放されゲープハルト家に帰ってくるが、ドイツが犯した罪と責任を巡る論争が起き、エンネをはじめゲープハルト家の人々には重い空気が漂う。それでも、ゲープハルト家の人々は微かながらも希望を探そうと前を向こうとして物語は終わる。『ベルリン三部作』は激動のドイツ史を市井の人々であるゲープハルト家の人々の目線から見た物語である。ゲープハルト家の人々が生きた時代は非常に過酷なものであるが、著者クラウス・コルドンは真正面から向き合って物語を書いている。

2020/07/23

しゃん

『ベルリン』転換期3部作を読み終えた。全く異なるジャンルではあるが、『夜と霧』を読み終えたときと同じ読後感。個人や家族が政治や思想といった抽象に飲み込まれ、翻弄されていく様が苦しい。特に、この1945はこれまでの登場人物の悲しい結末が語られる。ナチスの支配が終わっても、多くの市民に解放が訪れたわけではなく、救いのない話が続く。つらい部分が多かったが、最後いくつか未来への希望が見えてきて、人間の逞しさを感じた。特に印象に残ったフレーズは「本のない住まいなんて、笑いも夢もない人と同じよ」というミーツェの言葉。

2020/10/12

ぐみべあ

第二次大戦終盤のベルリン。ソ連の占領により、戦争の終結を喜ぶと同時に、掠奪に怯える市民。正義とはなにか。その時権力の座に座ったものが「正義」なのか。平和と自由を得る手段としての暴力は許容すべきか。暴力以外の方法で戦うことは可能なのか。国民の生活を豊かにする自由で平和な国家はどうすれば作れるのか。民主主義国家において独裁者の台頭を許さないにはどうすればよいのか。など、多くの重要な問いを投げかけてくれる本。 ノンフィクションにはできない方法で、フィクションは歴史を伝えられると感じた。

2020/12/20

かもすぱ

ベルリン転換期三部作完結。長い戦争が終わって、占領下での新しい生活。父ヘレも無事収容所から帰ってくるものの、物心着く前に離れていた娘エンネとの親子らしい関係はイチからのスタート。戦争が終わったからいいというものではなくて、戦争があったという爪痕は深い。もちろん晴れやかなシーンもあって清々しいんだけど、このあとドイツもベルリンも東西に別れてしまうという歴史を知っているだけに、読者の気持ちには影が差してしまう。コルドン作品には別の時代のベルリン三部作があと2つもあって合わせて九部作だとは恐れ入ります...。

2021/06/16

遠い日

戦争は終わったが、敗戦と解放の考え方の違いで、人々の間では葛藤が続く。占領下のソ連兵に怯えながら、廃墟の街でエンネたちはそれぞれの今を生きる。何が正しいのかは、立場によって違う。ナチ憎し。スターリン憎し。やっと帰ることができた父・ヘレだったが、エンネはすんなりと馴染めない。戦争のない春なのに、戦争の爪痕に未だ苦しめられる民衆の疵は深い。ただ、希望は捨てない。それだけが生きるよすがだ。この先にドイツの分断が待っていることは、誰も知らない。あとがき、訳者あとがきまで含めて、読みがいのある作品だった。

2022/06/02

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