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二人比丘尼色懺悔 (岩波文庫 緑 14-5)

二人比丘尼色懺悔 (岩波文庫 緑 14-5)

二人比丘尼色懺悔 (岩波文庫 緑 14-5)

作家
尾崎紅葉
出版社
岩波書店
発売日
1991-03-07
ISBN
9784003101452
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二人比丘尼色懺悔 (岩波文庫 緑 14-5) / 感想・レビュー

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井月 奎(いづき けい)

まず題名が良い「二人比丘尼」は仏教説話であり、「色懺悔」は紅葉の造語であろうが、それが何をさしているのか読み手に想像の幅を与える。描写も秀逸で、「発端 奇遇の巻」の最初が山間の庵の寂しさと寒さを抽象的に連続して書いたのちに「微温湯(ぬるまゆ)」「渋茶」と具体的にあたたかいものを出してぬくもりの疑似体験をさせる。その速度感は心地よく音律も良い。同じ男を愛した二人の女性の物語を一人目をモノローグ、二人目を登場人物すべての会話から進める組み立て方も読み手が新鮮な気持ちで物語を追うことができる優れた工夫である。

2015/07/25

還暦院erk

図書館本。難語が多く大変。そもそも序文からp7「くよくは済を過ぎず、かくはぶんを渡って死す(注:一部平仮名書きに変えました)」とか!日本国語大辞典と中国の地図を調べたら、要するに「本来の自分の分野外の作を試みるのは無謀」ということらしい。だが20代前半の紅葉は表題作により独特の言文一致の「悲哀小説」を打ち立てた!p7「貧家は浄く地を掃き、貧女は巧に頭を梳る」に謙遜交じりの自負がうかがえる。で、件の小説は…個人的には『新色懺悔』の方が設定がぶっ飛んでいて面白かった。悲哀も凄いが突き抜けてるとむしろ爽快。

2019/09/04

まり

美しい文章に感じ入るお話。とにかく句点が多いけれど、それがかえってテンポ良く読み進められる。 互いを労り合う女たちと、互いに敬い尊ぶ男たちの。 よくあらすじ(というかネタバレ)に書かれる“同じ男を愛した二人の女の話”というよりは、“二人の女を最期まで等しく愛したかった一人の男がいた話”。懺悔していたのは男の方だったのではないか。

2019/01/23

かりんとー

新色懺悔のほうがわかりやすい。 娘は10代で70代のおっさんに嫁いだ。 まあ、そう長くは生きないだろうから、 死んだら遺産もらって新しい男でもつかまえようかな なんて考えてたら、おっさんは116歳まで生きてしまう。 娘ももう60代。ああ、人生ムダにしちまったぜ、みたいな話。

2013/12/26

坪内と二葉亭が小説の筆を断った明治二十二年に発表された本作は、それまで滑稽物で知られていた尾崎紅葉の出世作。山田美妙への対抗心に促されて、比喩や擬人法、倒置法、体言止め、リーダーの多様などに加えて雅俗折衷文という「一風異様の文体」で悲哀が描かれる。形式もモノローグから神視点に途中で転換する。最初は難しいかと思ったが読み出せば案外スラスラ読めた。泉鏡花が衝撃を受けて作家になるきっかけとなったという逸話に恥じずストーリーは本当に面白くて涙を誘う。

2021/03/15

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