読みたい本がここにある

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

夢の女 (岩波文庫)

夢の女 (岩波文庫)

夢の女 (岩波文庫)

作家
永井荷風
出版社
岩波書店
発売日
1993-04-16
ISBN
9784003104248
amazonで購入する

夢の女 (岩波文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

mt

荷風は、主人公のお浪に最後まで救われることのない苦難を味あわせる。田舎から呼び寄せた両親と妹と、幸せな生活を期待したのも束の間、それまで貧しいながらも通じていた家族の絆は崩壊する。荷風の持ち味は、どうしようもなく暗い筋書でも深刻な深みに浸からせない描きかたであるし、いつも情景を目に浮かばせる表現力は秀でている。逆に荒々しさがなく、あまりにきれい過ぎる文章は好き嫌いが生じるところかも知れない。それでもめったな23歳が書けない落ち着きがあり、流麗な文体をこの歳で身に付けていることは驚きに違いない。

2015/10/23

双海(ふたみ)

貧しい家族のため、女中奉公から商人の妾、娼妓、待合の女将へと、つぎつぎに変貌をとげる元藩士の娘お浪。境遇に翻弄されながら明治という新時代の波間を必死に浮きただよう日陰の花のあわれさを、にごりのない抒情性をたたえた文体で照らし出す。(カバーより)

2014/10/27

G三世

奉公に出た先で暴力によって妾にされ、子供まで生まれてしまったお浪に主人が死んだことが伝えられる。これを契機に、娘のため、没落した家族のため、深川にまで身を堕としてまで、遮二無二生きるお浪の半生を描く。渡仏前の自然主義文学の影響を感じさせる『地獄の花』が好きで、同じく初期の本作を手に取った。『地獄の花』と異なり、廓が大きく関係してくるため、後の『濹東綺譚』や『腕くらべ』といった作品の匂いも感じさせるが、やはり目につくのはお浪の身の上。報われぬ主人公の儚さを、風景描写が盛り立てている。

2016/06/05

yutorineet

束の間の幸福はすぐ後ろから追い縋ってくる悲運の呼び水でしかない。日蔭の花は社会や心の闇を流れる暗い運河に流され抗うすべがない。夢とはこうであったらああであったらと夢想することを言うよりはその時々をしのぐ生活が夢を見る如くあっという間に過ぎ去る事態を示す方が近い。救いがなくて具合悪くなったよなんでこんなもの書いたの荷風さん…。

2020/10/07

屋根裏部屋のふくろう🦉

我らが荷風散人はあくまでも写実的に描いており、まるで無声映画のナレーターのようにさえ見える。その中で、切なさ、悲しさ、哀れさといった言葉が全体を通底する重低音となっている。お浪の人生は宿命的で「生まれながらにして、已にその人の運命は、逃れる事の出来ぬ一定の方向に進むべく限られているものではなかろうか」。 露伴にしろ、紅葉にしろ漢籍に優れた人の文章には品があるね。

2018/10/01

感想・レビューをもっと見る