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志賀直哉随筆集 (岩波文庫 緑 46-6)

志賀直哉随筆集 (岩波文庫 緑 46-6)

志賀直哉随筆集 (岩波文庫 緑 46-6)

作家
志賀直哉
高橋英夫
出版社
岩波書店
発売日
1995-10-16
ISBN
9784003104668
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志賀直哉随筆集 (岩波文庫 緑 46-6) / 感想・レビュー

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カブトムシ

「太宰治の死」より。自殺といふ事は私は昔は認めず近年はそれを認め、他の動物とちがひ人間にその能力がある事をありがたい事に思ってゐる。然し、心中といふ事には私は今も嫌悪を感ずる。対手の女は女らしい感情で一緒に死にたがるかも知れないが、その時をはづせば案外気楽に生きてゐるかも知れないし、第一、残る家族にとって、自殺と心中ではその打撃に大変な差がある。細君にとって良人が他の女と心中したといふ事は一生拭い難い侮辱となるであろうし、子供にとっても母親が侮辱されたといふことで、割り切れぬ不快な印象が残るだろうと思ふ。

2020/07/14

カブトムシ

私は前に志賀直哉が森鴎外、永井荷風について触れている文章を読んだことがないと投稿した。しかし、この随筆集をぱらぱらめくってみると、自分が見落としていたことがわかった。何ヵ所か鴎外や荷風の 名前が見つかった。ただ、そのことは、ほぼ言えることである。志賀は、文学上の師を持たなかった。人生の師は「内村鑑三先生の想い出」にも書いてあるように、内村鑑三だった。白樺派の大抵の作家は、夏目漱石の方に近かった。志賀には、夏目漱石の作品の「猫」や「坊っちゃん」などのユーモアに触れた文章もある。谷崎潤一郎は鴎外や荷風に近い。

カブトムシ

志賀直哉自身が「私の場合、随筆と小説の境が曖昧」と述べていたと思います。「沓掛にてー芥川君のことー」は、志賀直哉の意向で、小説になっていたと思います。分類上のことで、この本に「太宰治の死」も載っているので、若い人たちに紹介したい訳です。有島武郎の死には怒りを感じた志賀も、昭和2年の芥川龍之介の死には、同情的でした。沓掛というのは、今の軽井沢のことで、彼は軽井沢に来る途中、列車の中で、芥川の死を報じた新聞を見ています。それ程親しくなかったが、我孫子の自宅に訪ねて来たことを中心に芥川との想い出を記しています。

Tenouji

著名小説家の随筆集って、その時代背景なんかが知れて、面白い。この時代にも、国語問題や、行き過ぎた科学技術に対する懸念があったんだね。簡潔な文体でつづられる夢物語は、リアルに感じる。

2020/03/20

★★★★★(志賀直哉に触れることのできる中々興味深い一冊だった。志賀の道徳心と強い自我、視覚的記憶力と簡潔な表現力。「創作余談(続・続々)」での自身の作品への振り返りは面白い。志賀自身、作品によっては創作と随筆との境界が甚だ曖昧だと語っているが、それは志賀に限ったことではないし、そういう形の随筆(私小説?)は面白い。又、内村鑑三についても語られているが、志賀のある種道徳心は、この頃(教会)の虚偽不正を憎む倫理観が肉付けされている。「沓掛にて(芥川君のこと)」や「太宰治の死」も収録されている。)

2013/11/28

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