友情 (岩波文庫 緑 50-4)
友情 (岩波文庫 緑 50-4) / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
友で括る他人、恋愛で括る他人、それぞれへの愛情の物語。1人の女性と2人の男性で展開。前半、男性が女性に惹かれていく経緯の情勢と心境を描写。後半では女性が発露する男性友人への恋愛感情、それを受けた友人は秘めたる女性への憧憬を恋愛感情へ昇華させ、その確信した愛情を友情より優先させる。興味深かったのは後半の心境描写。登場人物の文章で表現する。文語化は徐々に許されざる恋愛の醸成する様子を見事に理解させる。他人に対する想いは、利己的だろうか利他的だろうか。他人に抱く好意、相手がある以上良し悪しは存在しないのだろう。
2022/01/27
ゴンゾウ@新潮部
高校時代に好きだった作家のひとり。その時は男の友情に感動したのを憶えている。再読すると野島の女々しさに憤りを感じ、大宮の偽善なところが透けて見えてしまう。そんな中でも周りに流されない杉子の強さが際立った。 でも野島と大宮を比べたら杉子の選択は当然ですね。素直に友情の美しい物語と思えなくなってしまったのは自分が擦れてしまったのかと思ってしまう。
2014/09/01
Miyoshi Hirotaka
小さな仲間内の恋の争奪戦の結末に海外赴任が決定的に影響をするのはトレンディドラマのプロットに酷似。さらに、一瞬の油断で親友に恋人を盗られる内容を歌った「テネシー・ワルツ」がリリースされる30年前にその筋書きを先取りした先見性に目を見張る。白樺派が私淑したロシア文学では、恋、結婚、不倫に境目はない。ところが、欲望の炎に身を焦がし、悲劇的な選択をさせるより、恋と友情の調和を目指す方向を歩ませた。若い時の恋と友情は対立するが、長い年月を経れば調和する。真摯な恋であれば、葛藤と恩讐は解消し、建設的な方向に向かう。
2016/06/16
藤月はな(灯れ松明の火)
野島の「女は才気走っているのは好かん」や「妻にするなら常に自分のことを称え、認めてくれる人でないと」という考えに「女を舐めるんじゃねぇ!」とむかっ腹が収まりませんでした。更に人を勝手に理想化した挙句、それを相手が拒否すると相手をすぐに侮蔑し、自分を高尚だと思い、人を見下すことで己を保つ野島の姿に私の父が被るのでイライラが倍に・・・・。その分、杉子の自分のエゴを貫く姿やノジマへの辛辣な評の方に心底、スッキリしました。時に人はどんなに浅ましくても罪悪感や痛手を踏み台にしても得たいものを得なければならない。
2015/03/29
カブトムシ
私は高校時代に読んだのか、いつ読んだのか忘れてしまいました。私はあらすじは少し覚えています。だが大体はもう忘れてしまってます。高校の時に、三島由紀夫が割腹自殺した三島事件がありました。その時に、田中君という友達が、武者小路実篤を読んでいたのが、三島由紀夫を読み始めました。私も田中君にはかなわなかったけど、ほぼ同じでした。最近の有名人の又吉さんが、「友情」を読み出したら、止まらなかったそうです。新潮の100冊にも長いこと選ばれていたロングセラーです。武者さんは、詩人でもあり、画家でもあり、思想家でもあった。
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511