KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1)

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1)

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1)

作家
室生犀星
出版社
岩波書店
発売日
2003-11-14
ISBN
9784003106617
amazonで購入する

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

新地学@児童書病発動中

室生犀星の自伝的な連作中編集。生涯にわたって詩を書き続けたことから分かるように、本質的に犀星は詩人なのだ。犀星が書く文章は、リズミカルで詩情をたっぷり含んでいて、読んでいると心が透き通る気がする。酒場の乱闘に巻き込まれたことで、自己を見つめ直す「或る少女の死まで」が一番の好み。ぼんたんという綽名の少女との交流を通して、室生犀星が立ち直っていく姿は美しい。無垢な少女の心の美しさを感じ取ることができた詩人としての感受性が、犀星を救ったのだと思う。無邪気で優しい女の子を、ぼんたんと呼ぶ感性が好きだ。

2015/09/20

青蓮

以前読んだ「蜜のあわれ」が面白かったので、手に取りました。「幼年時代」「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」3編収録。どれも著者の自伝的小説で、美しい繊細な硝子細工で作られたような、ノスタルジックな雰囲気がありました。養子に出されながらも実母を慕う気持ちや、養家先にいる姉を思う気持ちなどがとても切なく胸に迫ってきます。「或る少女の死まで」に登場する少女・ふじ子とのささやかで暖かい交流は微笑ましいが故に物語の結末が悲しい。目を閉じれば、瞼の裏に鮮やかなボンタンが見えるよう。沢山の別れが詰まった作品です。

2017/07/19

nakanaka

自伝が三篇。「或る少女の死まで」ではなにか大きな出来事があるわけではないものの室生犀星を取り巻く人たちとの交流がゆったりと描かれている印象。そこに心地良さを感じ読みやすさにも繋がった。繊細ながらも心優しい室生に親しみを感じ「おじさん、おじさん」と懐いてくる少女・ふじ子。微笑ましいやり取りが続いていただけにラストでの彼女の病死という衝撃が涙を誘う。「幼年時代」では室生の複雑な生い立ちが語られ、「性に眼覚める頃」では異性に興味を抱き始めた自分への戸惑いや友人の死という出来事が描かれている。

2020/10/06

メタボン

☆☆☆☆☆ 大晦日から続けて室生犀星を読む。晩年の作品から処女小説三部作へ立ち返って読んだことから感慨も一入。多感な少年期から、貧しく不安や悩み多き青年期に至るまでの自叙伝。前二作と表題作とでは舞台が金沢と東京と違うこともあり、小説の空気観が微妙に異なるが、全編に渡ってひたすら言葉が美しく、感性に響いてくる。「性に眼覚める頃」はタイトルも良く、賽銭を盗む女を節穴から覗き見る場面、そしてその女の雪駄を片方だけ盗む場面があまりにも官能的で、いい年をしてドキドキしてしまった。表題作のラストも良い。犀星は天才だ。

2016/01/03

Mijas

透明感溢れる美しい文章に引き込まれた。著者は、本当に美しいものを見ることができる人なのだろうと思う。姉、少女の優しく穢れのない魂、精神の綺麗さ、他から損なわれない美を凛としたものとして描く。同時にその先に哀しみがあることを知っているかのような儚げな表現に、涙誘われてしまう。「幼年時代」では、実母に会えない淋しさ、石ころで一杯になってしまった少年の小さな心を思うと、胸が苦しくなった。「或る少女の死まで」では、衰弱しきった著者と純真であどけない少女との交流が微笑ましく、あたたかな美しさに救いを感じられた。

2015/10/10

感想・レビューをもっと見る