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都会の憂鬱 (岩波文庫 緑 71-3)

都会の憂鬱 (岩波文庫 緑 71-3)

都会の憂鬱 (岩波文庫 緑 71-3)

作家
佐藤春夫
出版社
岩波書店
発売日
1955-03-05
ISBN
9784003107133
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都会の憂鬱 (岩波文庫 緑 71-3) / 感想・レビュー

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(C17H26O4)

自伝的小説。『田園の憂鬱』の続編と思って読み始めたが、文章の印象がかなり違う。「姉妹篇もしくは雙生児であって、同時にその續篇」とあり、なるほど単に続編という訳ではないのだな。田園での主人公の憂鬱が何処か芝居じみていてユーモラスに描かれていたのに対し、都会での憂鬱は写実的に描かれている。自分の内側だけで完結するような甘い憂鬱と、社会を意識せざるを得ない都会の生活における憂鬱との対比。僅かな陽も入らない狭い家で他者と自分を比較しながら無為に暮らす様子にかなり滅入った。しかしなんだか読まされた。

2022/01/09

HANA

『田園の憂鬱』続編。同じ憂鬱とは言っても、その方向性はまるで逆。日々を無為に過ごす主人公と浮かび上がれないその友人を描いているのだが、読んでいるうちに現実を思い起こさせられ鬱々とした気分になってくる。『田園の憂鬱』があくまで神経症的、自分の内面と向き合う憂鬱さなのに対して、本書は生活苦による憂鬱であり社会との関わり合いによる憂鬱と対照的な構造となっている。田園のある意味での典雅さは影を潜め、即物的なものを思わせる文体がそれに拍車をかけているし。好みは『田園の憂鬱』だが、こちらの方が読んでいて憂鬱にはなる。

2018/07/26

壱萬弐仟縁

1922年初出。冒頭は江森渚山の話。仕事乃至職業を持つてゐる人間、その人間が楽しげにその仕事に熱中してゐるのを見る時に、その傍にある何もすることのない人間、何をしていいか解らない人間、何も出来そうにない人間の抱く嫉み―生活をしてゐる人間に対する生活のない人間の嫉み(30頁)。まるで現代のNEET、SNEP問題そのものである。人の一生といふものはどうにかかうにか、どんな人間にでも過ごせるやうには出来てゐるであろう。

2016/02/13

ymazda1

「都会」とは無関係に「憂鬱」な主人公で、期待してた田園との対比としての都会も描かれてなくて、あと、本人っぽい主人公がいろいろダメダメすぎて、内容的にはベタな私小説って感じがした。 そんな感じで、前々から読んでみたかった作品ではあったけど、第1刷が1955年で第3刷が2018年という重版の少なさも、なるほどって気がした。 ただ、江森渚山という登場人物は、昔のかなり年上のバイト仲間と被るせいか、すごく魅力的に感じられた。

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