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放浪記 (岩波文庫 緑169-3)

放浪記 (岩波文庫 緑169-3)

放浪記 (岩波文庫 緑169-3)

作家
林芙美子
出版社
岩波書店
発売日
2014-03-14
ISBN
9784003116937
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放浪記 (岩波文庫 緑169-3) / 感想・レビュー

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Willie the Wildcat

時勢を含めた苦難の数々も、口にするほど苦とは感じさせない柔軟性。根底の強さは、やはり”文字”への思いかもしれない。心身の落ち着き先を模索、故の故郷への思い。昨年訪れた『林文子記念館』が、もれなく終の住処也。四季を織りなす花々や、日常の食生活も微笑ましさに繋がる感。前者からは「ワンタンの屋台」、後者からは「継続だんご」。それにしても、”発禁”の根拠は、女史の奔放な生き方が問題なのかな。多少問題があっても、思い続ける姿勢は、哀しみのみならず、時に愛おしさも漂っていた気がする。

2019/03/28

ヨーイチ

青空文庫にて。どうやら女人藝術に掲載された作らしい。その後評判を取り、出版に至る。日記を基にしたと言うより、殆ど日記の抜粋の趣きで時節が飛び飛びでその度に職場、住環境が変わり、或いは故郷に帰ったりと正に放浪の趣き。女給の生活描写が名高いが、本当に職を転々として或いは借金の申し込み、空腹とか若い女性には過酷とも思える描写が多いが、独特の言葉使いと短い文章の連続が面白い。詩作もしていたってのが、伺える。こうなると「書かれなかかった分とか削除した箇所」が興味深い。「文は人を表す」って言葉を思い出した。

2017/06/06

ゆか

林芙美子の代表作。職を転々としながらも、逞しく生きる姿がとてもよかった。本文より「生活らしいことも、恋人らしい好きな人も、勉強らしい勉強もできなかった自分のふがいなさが、凪の日の舟のように侘しくなってくる。こんどは、とても好きなひとが出来たら、眼をつぶってすぐ死んでしまいましょう。こんど、生活が楽になりかけたら幸福がズルリと逃げないうちにすぐ死んでしまいましょう」「ゴオガンだのディフィだの好きなのですけれど、重苦しくなる時があります。ピカソにマティス、この人たちの絵を見ていると、→続きます

2018/07/16

mm

第1部は昭和5年に刊行された。その元は、「女人芸術」に連載されていたものを時系列に抜粋編集。これがめっちゃ売れたので、時をおかずに、連載の残りに書き足して第2部が発刊される。その後、改稿・改編を重ねたらしいのだか、初連載から20年後に「日本小説」に連載を始めたのが第3部で、昭和24年に刊行される。3部作が収まった放浪記は、昭和25年刊行で、翌26年に林芙美子心臓麻痺により急逝。まさに人生をかけた作品である。貧乏・空腹・貧乏・ちょっと稼ぐ・貧乏・男の空振り・空腹・10銭もらう・3円貸すみたいな双六だよ。

2018/05/27

tono

林芙美子の出世作とも言うべき本作品。作品全体が叙情詩的な、散文の形式を多分に残した濃密な心情の発露。林芙美子のあのマグマのような熱のルーツを間近に見たような思いがした。とにもかくにも、生きること、書いていくことへの魂から迸る理屈ではない慾。今日一日の糧にも困る境遇と無関係ではないだろう。長い作品だが、一読の価値がある。自らの原点をはっきりと確かめることは、生きていく上で深く重い意味を持つのだ。

2015/08/08

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