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外科室・海城発電 他五篇 (岩波文庫 緑 27-12)

外科室・海城発電 他五篇 (岩波文庫 緑 27-12)

外科室・海城発電 他五篇 (岩波文庫 緑 27-12)

作家
泉鏡花
出版社
岩波書店
発売日
1991-09-17
ISBN
9784003127124
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外科室・海城発電 他五篇 (岩波文庫 緑 27-12) / 感想・レビュー

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ヒロミ

鏡花の濃厚な初期短編集。「義血俠血」と「化銀杏」が好きですね。「海城発電」は鏡花らしからぬ社会派な作品。戦争に対する強い憤りを感じる。「凱旋祭」もつらいですね。鏡花の弱い者への眼差しと共感は初期作品にもはっきりと表れています。解説にもあるように本当に極端な展開の話ばかりでした。

2016/09/30

優希

擬古文の文章が美しい初期の短編集だと思います。女性の生というものに強く惹かれる鏡花だからこそ生まれた『外科室』が特に素晴らしいと思います。一度目を交わしただけで恋に落ちた学生と少女が外科医と患者として再会することから始まる物語のエロチックさといったらこの上ないものがあると感じました。愛に準ずる物語の輝きを見たような気がします。どの話も不思議な感覚を伴い、常識では考えられない耽美的な世界があるのが魅力でしょうか。具体性を欠いた感性があるからこそ鏡花の世界は成立しているのだと思いました。

2014/08/12

yumiha

旧字に文語体、初めて見た言葉などに翻弄されながら読んだ。どの短編も生温い癒しなどありませぬ。おどろおどろしくまがまがしく猟奇的嗜虐的耽美的。読者を選ぶ。たとえば、表題作「外科室」の「雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて」などという描写は、お好きな方にはたまらんでせう。意外だったのは、「海城発電」(発電所の話ではない)や「琵琶伝」などのむごたらしい軍人たちが登場する話。日清戦争の頃に、そんな話を発表しても捕縛されたかったんだと驚いた。太平洋戦争時なら特高警察にいたぶられること、間違いなし。

2019/04/22

藤月はな(灯れ松明の火)

「義血侠血」は白糸の思いが痛々しいまでも清々しいがゆえに一層、遣る瀬無いです。「夜行巡査」は最後の一文に一部を見ても人間の性質を誤ってしまう人間の側面を上手く、表しているなと思います。「海城発電」は題名が不思議だったのですが最後でやっと分かりました。そしてこの作品は横暴になる軍政に対する批判でもあるのだと思います。そして「外科室」は血の色までも目にありありと浮かぶのにあまりの美しさと短さにある雰囲気の豊潤さに呼吸を忘れそうになりました。

2011/11/10

ベイス

箸休め感覚で短編を、と思ったらなんのなんの、泉鏡花の世界観にぐいぐいと引き込まれた。ちょっとくせになりそうなレベル。観念小説、と呼ばれるらしいが、登場人物がやたらと「極端」。心の中で「観念」をこれでもかと燃えたぎらせ、たいていは異常行動の果てに悲劇的な結末を迎えるのだが、当人たちにとっては「思いを遂げた」という意味で本望なのだ。極端すぎる観念の対象が、「結婚」や「愛国」といった社会一般通念への反旗、というところがまた共感ポイント。これはくせになる。

2020/05/15

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