木綿以前の事 (岩波文庫 青 138-3)
木綿以前の事 (岩波文庫 青 138-3) / 感想・レビュー
壱萬弐仟縁
「昔の日本人は、木綿を用いぬとすれば麻布より他に、肌につけるものは持ち合わせていなかった」(13頁)。貧しい身なり。「近年まで木曾の福島に問屋があって、盛んに関西地方に送り出していたタフなるものも、たとえ今日では木曾の麻布だけに限られているとしても、少なくとも名の起こりはかつてそれ以外の植物繊維を追ったものがあった(略)」(27-28頁)。そのような話を知識人らに今度聴いてみたい。「少しでも余裕の有る者が、他を助ける心持で、本を読みまた考えるようにならなければ、次の代は今よりも幸福にならぬ」(108頁)。
2013/12/27
ミツ
表題作含め19の講演録を収録。 70年以上前の著作だが就職難や児童の体力低下、所得格差の拡大など現代と同じような問題を衣服、団子、餅、囲炉裏から酒、煙草、遊女に至るまで現実の細々とした生活の歴史を明らかにすることによって読者に問い掛ける啓蒙書。 その語りは全く古さを感じさせず優しく誠実だが情熱を秘めた柳田国男という人の呼吸や人柄がダイレクトに現れていてとても好ましい。 今も昔もかなり違うはずなのにどこか共感してしまう、心に響くものがあることを実感した。佳作。
2010/01/18
R
着物,食料,酒,習俗,女性の役割,生活全般に対する柳田の学問的姿勢が詰まっている。俳諧を絡めての論述は柳田の個人的趣味で,他人には真似できない柳田学としての魅力。当たり前のことは注目されず,別の当たり前が確立することで,まるでなかったかのように消え去っていく。昔のこととおぼろげに記憶され,ずっと昔からそうであったようにイメージされるが,実はそうではないことが多い。伝統という言葉で片づけるのは軽すぎる。
2021/11/07
tuppo
このタイトル深みがあって好きです。女性にまつわる民俗研究の成果が例の柳田文体で記されているわけですが一冊の本になったのが不思議なくらい中身はまちまちで雑誌の隙間を埋めるコラムっぽいのから本格的方言論までなんでもござれとなっています。これを一体広範とみるか散漫とみるか好みが別れると思います。僕はどうにも後者でした。
2013/03/01
a075
日本人の衣食住を出来る限り昔まで探ったもの。恐ろしい精度。しかしこの本もすでに昔の本。現代は更に加速し日本人の形が見えなくなってきているのを感じる。
2009/01/30
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