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ワシントン・スクエア (岩波文庫)

ワシントン・スクエア (岩波文庫)

ワシントン・スクエア (岩波文庫)

作家
ヘンリー・ジェイムズ
河島 弘美
出版社
岩波書店
発売日
2011-08-19
ISBN
9784003725139
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ワシントン・スクエア (岩波文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

テーマも古典的だが、全てを知る万能の作者がいて、読者に対して小出しに情報を提供してゆくといった語りのスタイルはいかにも古さを感じさせる。後年のヘンリー・ジェイムズの実験的な手法からも、また1880年という制作年代からしてもいたるところ、その古さが目に付く小説である。もっとも、初めての、そして生涯でただ一度の恋に揺れるキャサリンの心情の動きは、読者にもサスペンスとして伝わってくる。また最後の一文はフローベールを(例えば『ボヴァリー夫人』)想わせ、読者を茫然たる余韻に浸らせることになる。

2016/11/16

藤月はな(灯れ松明の火)

女であることと頭脳を当てつけて散々、揶揄してきた父に最近、「早く、生きている内に孫の顔を見せてくれよ」と言われると軽蔑の念しか湧かなくなってきている私には共感しやすい物語でした。キャサリンは優しいから「父は完璧ですの」というけど、父、スパローは最悪な人間である。しかもキャサリンの妻と結婚した敬意を踏まえるとスローパーもモリスと同じ穴の狢じゃないか!でも最後の死の床に向かおうとしていながら遺産分与でキャサリンをまだ、意のままにしようとするスパローに対し、オールド・ミスを貫くことで復讐した彼女の姿にスッキリ。

2015/10/03

のっち♬

正直だが引っ込み思案で器量も良くない娘の前に、ハンサムな求婚者が現れ、財産目当てと信じた父親は断固として結婚を許さない。どこか古臭いメロドラマ的で単純明快なストーリーが小刻みな足どりで進むが、ここに絡んでくる軽率な振舞いをする叔母の存在感が強烈で、ユーモアや皮肉の演出に一役買っている。父娘の揺れ動く心理の鋭敏な描写や、人物の印象が次第に変化していく様が魅力で、会話文に重心を置いた文章も特徴的。それぞれの思惑が交錯し、齟齬をきたし、挙げ句の果てに復讐じみた行動に繋がっていく一連の流れがなんともシニカルだ。

2020/08/31

星落秋風五丈原

【ガーディアン必読1000冊】スローパー博士とその妹(キャサリンの叔母)ペニマン夫人とアーモンド夫人、キャサリンと恋人になろうとする青年モリスとその姉モンゴメリー夫人を主要人物として物語が進む。キャサリンのやり方があまりにも正攻法すぎてうまくいかなかったが、もっと広い世界を知って経験を積み自分の意見を求めれば、もしかしたら別の選択があったかもしれない。つまりは、ワシントン・スクエア=Square、のように、主人公が四角四面の窮屈な理屈の中で、自分の希望を叶えようとするから一層窮屈になる。

2019/12/09

みつ

恋愛小説の形を借りて心理の綾を描く。結婚を考える二人に対し、妻を早くに亡くし娘と暮らす裕福な博士は、男が遺産目当であるとして反対を続ける。そこに博士の妹二人が絡み・・・という単純極まりない筋立てで事件らしい事件もない。それで300ページを超える小説を読ませてしまうのだから、ジェイムズ恐るべし。恋人同士以上に、博士とその妹ペニマン夫人の造形が鮮やかで、特に夫人のおせっかい焼き(娘の恋人にも彼女以上に会っている)がおかしみを誘う。オースティンだったら恋人同士をどう描いたいたか、と思うと、そちらも読みたくなる。

2022/11/26

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