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新しい文学のために (岩波新書 新赤版 1)

新しい文学のために (岩波新書 新赤版 1)

新しい文学のために (岩波新書 新赤版 1)

作家
大江健三郎
出版社
岩波書店
発売日
1988-01-20
ISBN
9784004300014
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新しい文学のために (岩波新書 新赤版 1) / 感想・レビュー

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ころこ

著者による類書はいくつかあって、書いてあることはほぼ同じですが、引用される小説に違いがあってそこに出てくる世界文学を読むことを目標にしていたものでした。「異化」は確か著者と筒井康隆の著作でほぼ同時期に登場しています。著者の文章が読みとり辛いと感じるのは、恐らく意図的に行っていることです。文章が切れるところをわざと繋いでいるので翻訳調になっていて、難しいことが書いてある錯覚を起こさせるというごく単純な仕掛けです。権威主義的なのは否めませんが、大江を認めて筒井を認めない読者の態度の方がまずは問題かと思います。

2021/09/13

藤森かつき(Katsuki Fujimori)

面白い。私の頭には、今ひとつ難しいが、でも面白い。芸術としての小説の読み方と書き方。クタビレた言葉を洗い流し、真新しい言葉に仕立てなおす、その努力が必要で、詩や小説はそのためにあるのだという。「異化」ということを、もっと深く考えてみたいと思った。また、他の人間によって作られた理論を、そのまま自分が書くための理論とするわけにはゆかない。自分の中の転換装置を通し、その過程を通じて、書くための理論になり、書く人間としての自分がきたえられる。ということだけど、作家の主体、というような、その転換装置が難しいよねぇ。

2020/01/28

うらなり

二度,三度読み返して少しづつ理解ができるようになる。いろいろな作品を例に出して解説しているのだが、その作品を読んでなければ、はいりこみにくい。しかし、想像力を刺激しないものは文学ではなく、すらすらと、情報伝達の能力に優れた文章や、ベストセラー小説に見る、いかにもなめらかで情緒的に抵抗のない文章は、退屈はまぎらすことはできるが、読むという人間的な経験がなかったも同然という。柳田国男が『海上の道』で記したヤシの実に藤村の想像力が爆発したとあり、想像力というものは状態ではなくて人間の存在そのものと。

2023/02/23

原玉幸子

「異化」をキーワードに文豪の作品を引用しつつ、「純文学」の衰退を嘆いている訳ですが、何が問題あるか、何を主題とすべきであるかは、「読むから書くへの転換」で喩えられる作家=読者に委ねられ(恩田陸だったかの「作家になるということは、読書好きのなれの果て」との言葉を思い出しました)、大江は「構想の心の働き」とは言うもののズバリとは言わずに、結論は先送りされている様。『ヒロシマ・ノート』を端緒に核廃絶をテーマに据える決意は分かったが、表題に通じる大江の企図に就いては、はて?と感じる構成でした。(◎2023年・冬)

2023/11/03

かふ

大江健三郎フリークとしては、最初に読むのだったらこの文学論を進めるかな。小説の方法論だがバフチンの文学理論を優しく噛み砕いたような本。スルメのように味わうべし。異化作用だから。それ以降は大江健三郎の小説は何をよんでもよし。止められなくなるから。

2023/03/13

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