安心のファシズム: 支配されたがる人びと (岩波新書 新赤版 897)
安心のファシズム: 支配されたがる人びと (岩波新書 新赤版 897) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「自己責任」とともに新自由主義を受け入れた社会は、1%の富裕層と99%の貧者との分断が固定化してゆくだろう。それが資本主義が纏う最後の姿なのだから。オーウェルの『1984年』はディストピア小説ではなく、予見の書であった。しかも、もはや後一歩というところまで。例えば、顔認証とケータイGPSによる国民の徹底管理はもはや中国だけではない。また政治家たちが国会で話す言語は、我々と意思の疎通をなさなくなっている。「説明を尽くす」というのは、すなわち有耶無耶にするというのであるから。教育もまた危機的な状況である。⇒
2022/10/08
黒猫
ファシズムとは何かを知りたかったが、あまり書かれていなくて残念でした。2000年代前半。監視カメラや教科書採択問題、国旗国歌法案、インターネットの普及、イラク戦争などのキーワードが並ぶ。ファシズムを語った本というよりは、何となく焦臭い感じの日本を語った社会論のようか気がする。出版から 15年経って読んでみたが、監視カメラもGPSももう当たり前になりすぎていて、これをファシズムとは言えないのだろうなあと思う。詰まる所、今の国際社会にとってファシズムとは何かという疑問が残った。
2018/05/15
おおにし
凶悪犯罪やテロのない安心な社会がほしいと、我々が安心を望むこと自体は間違ってはいない。しかし、安心な社会を望むことが監視社会の強化につながれば、我々のプライバシーの自由が損なわれることにならないだろうか。そしてそれがファシズムへの道につながっていく恐れはないか。この本を読んでフロムの「自由からの逃走」は必読書だと思った。
2017/09/17
魚京童!
楽なんだよね。指示待ち人間って。文句だけ言ってればいい。指示が悪い。もっと考えろ。しょうがないよね。幼稚園児なんだから。私が指示してあげる。っていうヒトラーが出てきた。自分で考えることこそ至高と思ってるけど、思わない人が多い。哀れな人生を送ってきたのだ。考えることをさせず、従うことだけ押し付けられてきた。教育から変えるべきだとか壮大な実験に興味はない。私に火の粉を振りかけるなって思う。邪魔をするなってだけ。だから私はアイヒマンになれる。喜んで、運ぼう。それが難しいところだ。支配‐被支配と無関心。その3者が
2020/06/06
はるわか
騙されつつ、しかし多くの人々は自らの置かれた立場にどこかで感づいている。積もり積もった不満や不安を、だからといって権力を有する元凶にぶつければ報復が怖い。より立場の弱い人々に八つ当たりし、あるいは差別の牙を剥いて、内心の安定を図るようになっていく。自由からの逃走。自動改札機と携帯電話。監視カメラの心理学。社会ダーウィニズムと服従の論理。
2018/11/25
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