多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ (岩波新書)
多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ (岩波新書) / 感想・レビュー
ユウユウ
なぜ多神教があり、一神教が生まれたのか。それも地中海周辺という限られた地域で限られた時期に。副題にある“宗教ドラマ”がまさにと思える展開。個々のエピソードも興味深かった。もっとじっくり読んだり、参考文献に触れたりしたら、より楽しめそうだ。
2020/08/27
おおにし
地中海の古代人の心には命令を下す「神」の部分と、それに従う「人間」の2つの部分に分かれていたという。これを〈二分心〉説といい、脳科学的には「神」が右脳、「人間」が左脳に当たる。しかし古代人が文字を獲得して抽象概念を持つようになると今まで聞こえていた神の声が届かなくなった。世界の激動に巻き込まれた人々は、声が聞こえなくなってしまった神への救済を求め、信仰を深めていくなかで一神教が誕生したという。〈二分心〉説はとても興味深い。しかしインドや日本などでは〈二分心〉説は当てはまらなかった。なぜなのだろうか。
2020/01/25
びっぐすとん
図書館本。中々面白い。現世利益のシュメール人、来世信仰のエジプト人、現世も来世もさして期待してないギリシア人。差別され抑圧された人々は絶対的な神、一神教を信仰しやすい。多神教の神は所定の祭祀と犠牲を奉じさえすれば人間の所業に干渉しないが、一神教の神は所業どころか人間の想念にすら干渉する。アルファベットの開発と時を同じくして人々が神の声が聞こえなくなってしまうことが、一神教の広がる原因ではないかと著者は言うが、アルファベットの発明がなぜ原因なのかが読んでもわからない、地球上の全てには当てはまらない気がする。
2021/01/26
hikarunoir
案外、非理性を理性的に捉えたり、言語化するとかは危険な試みなのかもしれないが、我々は戻れない。多神崇拝は乱交、一神崇拝は一途な愛にも見える。
2020/02/11
tieckP(ティークP)
題名より副題が内容を表している本で、宗教ドラマについて著者の思うことを漫然と書いていたら対象が多神教と一神教だった、という本。全体をつらぬく方向性としては、歴史的事実に(また近代人的な人間観に)囚われすぎないようにしよう、当時の人間は近代人の精神で世界を受け止めていたわけではないのだから、という主張(その後、苦難に救済を探して一神教の絶対性を崇めるにつれその精神性が失われて現代にいたる)。もう少し個々の部分がそうした主張のどこを補強しているのか分かりやすいとありがたかったが、話としては各章楽しく読める。
2018/05/02
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