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昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71)

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71)

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71)

作家
河合隼雄
鶴見俊輔
出版社
岩波書店
発売日
2002-01-16
ISBN
9784006000714
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昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71) / 感想・レビュー

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井月 奎(いづき けい)

昔話はシンプルであるからこそ理解が難しいものも多く、それを深層心理学者の河合隼雄が、ダマになったような昔話を丁寧に解きほぐしてくれます。いろいろな暗喩や隠された意味、神話や伝説との相互関係からなる昔話の多くは日本の宗教観と、そこからあらわれる人々の意識です。河合隼雄はキリスト教との比較を多く用いて説明してくれて、一つの解釈に到達します。それは河合隼雄の解釈なのです。彼が真に求めているのは解きほぐしたものから自分で再構築して意味を見だしてほしい。と言うことなのだと思うのです。名著と言っていいと思います。

2017/05/07

梟をめぐる読書

全9章あるが、そのすべてに「女性」というテーマが関わってくるところに著者の関心と、「日本昔話における女性原理の働きの強さ」が窺える。とはいえ日本の神話や伝説でも「鬼退治」や「龍退治」のような(いわゆる西洋的、男性的な)主題はもちろん存在しているため、そのあたりのモヤモヤはこれから読む『神話と日本人の心』で解消されることを期待したい。「日本の昔話では『こちら』と『あちら』の境界がひどく曖昧なまま受け入れられている」というのは、現代において村上春樹や宮崎駿の物語が広く受け入れられている理由にも通ずるのでは。

2011/09/18

アイロニカ

昔話は下手に現代的な物語を読むよりも萌えやエロスを感じて面白い。この本では日本の昔話における女性像の描かれ方を軸に、世界の神話や昔話との比較を行うことで、物語における心理構造の普遍性と日本人に特有な傾向とを考察している。父性による切断、母なる自然への回帰、相姦状態への介入と分離、悪も内包した四位一体論など、現代社会を俯瞰するにも堪えうる物語の奥深さに感嘆するものである。どうでもいいが、萌える女神事典で曙の女神ウシャスが裸体で股間を輝かせていたのが神話の記述に近いとは…これには鬼じゃなくても思わずニッコリ。

2019/09/07

きょちょ

世界には似たような類の昔話が多い。そんな中、日本の昔話の独自性・特異性を見出し、日本人の心の深層を探ろうとするこの論文は、実に興味深く、また読んでみてとても面白かった。父性と母性(天照大神)、ハッピーエンドと何もない結末(無)、意識と無意識の境界の異なり、自我の発達過程、特に日本の昔話は女性が能動的・積極的に関わっていることで深層を明らかにしようとする。話は飛ぶが、この間、村上春樹の「海辺のカフカ」を読んで「よくわからん」が私の感想だったが、彼が昔話を書こうとしたと考えれば、「なるほど」と思う。★★★★★

2015/03/25

Yuki

日本の昔話を心理学的に分析することで日本人の心を探る本。日本の昔話では結婚してハッピーエンド、という話はあることはあるけど、そうでないものがたくさんある。とりわけその中に出てくる女性(姫、山姥など)を読み解くことで、日本人の持つあはれや独自の女性性、意識と無意識や此岸と彼岸の境界の曖昧さを見出していく。日本人の宗教への柔軟さ(「聖☆おにいさん」や「鬼灯の冷徹」を楽しめるような)や村上春樹等の純文学を楽しむ土壌など、そのあたりから来ているのかと考えさせられる。

2016/01/22

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