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源氏物語と日本人〈〈物語と日本人の心〉コレクションI〉 (岩波現代文庫)

源氏物語と日本人〈〈物語と日本人の心〉コレクションI〉 (岩波現代文庫)

源氏物語と日本人〈〈物語と日本人の心〉コレクションI〉 (岩波現代文庫)

作家
河合隼雄
河合俊雄
出版社
岩波書店
発売日
2016-06-17
ISBN
9784006003449
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源氏物語と日本人〈〈物語と日本人の心〉コレクションI〉 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー

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mm

久しぶりに河合隼雄さんの著作を読んだ。心理療法家だけあって、本を読むだけでも癒されるわと以前思っていたものだ。今思えば、私のどの部分が河合さんの文章によって、つなぎ合わされていたのかがわかるような気がする…私も少しは自己実現のプロセスを進めているのね。この著作は源氏物語に紫式部な内的世界がどのように反映されているかについての、興味深い分析。彼女は光源氏の物語を書こうとしたのではなく、彼女の中にあるいくつもの女性像をいくつかのキャラに分けて描いた曼荼羅と見ている他、宇治のトポスとか凄く面白い視点多し。

2017/02/01

コニコ@共楽

千年前の『源氏物語』を心理療法家の河合隼雄氏がどう読み解くか、とても興味深い本。西洋の個人の物語が14世紀の『デカメロン』に始まったのに対して、平安時代に『源氏物語』という大物語を作り上げていたという考察が面白い。一神教は『聖書』に物語を封じ込め、個人の物語は神に対する冒涜としていると分析している。『源氏物語』は、女性が女性を語っている物語として現代人へ生きるヒントを与えてくれるという。確かにさまざまな階級のいろいろな性格の女性が描かれ、多面性を持つ分身を感じることで読み手はそこに自分を見出し得る。

2024/03/28

roughfractus02

ユングは錬金術の過程に錬金術師が本来の自己に向かう個性化(personalization)の過程を読んだ。著者は『源氏物語』を紫式部の人格(personality)が自己自身に向かう個性化過程と見做し、光源氏と彼に関わる女性たちをその仮面(persona)と捉え、源氏を中心とした円を妻、娘、母、娼(恋人)の4領域に等分し、各領域に女性たちを配して曼荼羅を動かすように構造化した。著者は、源氏死後の『宇治十帖』の浮舟に至り、一人を愛することの困難が紫式部の無意識の現れとして「もののけ」を出現させたと解釈する。

2022/12/14

マーブル

筆者はこの著作により『源氏物語』を女性の目で見直そうと試みている。男性の目は構造を明らかにし、女性の目は全体の構図を見るとも語るが、だからと言ってその性差による特徴を持って女性の目で見ることが有効とだけ考えたのではないようだ。この作品に登場する女性たちは紫式部の分身であり、光源氏は狂言回しに過ぎないとする。瀬戸内の現代訳の最終巻を読んだとき、私も薫と匂宮が主人公と言うよりも浮舟の物語では、と考えてはいたのだが、すべての女性がそうとまでは思わなかった。先日読み終わったばかりではあるが、また読み直したくなる。

2019/01/08

冬峰

引き続き源氏物語に関する解説本を読む。此度はユングの紹介で有名な河合隼雄が、光源氏を中心に作者の分身である女性たちを配置したマンダラとして作品を読んでいく。結論から言うと、この本を読んだら「あれ、源氏物語って実は面白いのでは…?」と認識が変わる。酒井順子が「紫式部の欲望」と言うのと同じで、河合隼雄も空虚な光源氏よりも作者の心境や書きたかったものについて考えている。当時、一人では身動きできず選択も許されない貴族の女性は、精神の自由のみ残されていた。その中で如何に生きるか?というテーマに最後至る模様。

2023/02/04

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