青春の夢と遊び (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉 6)
青春の夢と遊び (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉 6) / 感想・レビュー
壱萬弐仟縁
1994年初出。対人恐怖症。他人と接するのに強い不安。赤面。嫌われるかも、とか(14頁)。これはいつの日か克服されている。人間を信じられれば解消されると思う。夢を生きるのは、実際的には困難で危険に満ちたことである。若者が夢を生きようとして挫折の体験を味わってきた(63頁)。中年のわたしもまだ夢はもっている。そうでないと、生きてもゆかれないし、生き甲斐というものも見出し得ないだろうから。
2014/08/29
roughfractus02
近代では子どもから大人への移行期として青年期が設定されると同時に通過儀礼は遊びに代替される。著者は、青年期に夢が将来のビジョンと夜見る夢に分かれ、前者の現実への適合の度合いが後者に及ぼす心への影響を注視する。一方著者は、古代、聖性に触れていた儀式も遊びに転化して聖と俗の階層構造が崩れ、遊びを通した聖-俗-遊の円環構造となって儀式の残酷さを露呈する場合もあることを指摘する。遊びを自ら制御する経験の積み重ねが近代人を大人にするのだが、いつでも青春なる謳い文句の背景には現代に氾濫する遊びの過剰消費も垣間見える。
2022/12/13
嘉月堂
中身は何度も読みましたが、新刊本が出たので再読してみました。河合氏の本は読んでいるだけで気持ちが落ち着いてきます。不思議です。でも、内容は読めば思い出すんですけど、すぐ忘れてしまいます。年のせいか?
2014/07/01
ꪔ̤̥ ꪔ̤̮ ꪔ̤̥
著者が無意識に避けていた「青春」というテーマ。青春に纏わる実例は山程お持ちのはずなのに、本書は多数の小説から青年期の象徴的な要素を見出し分析することを主としています。「夢」の部分は二通りの意味で取り上げており、とりわけ眠りの夢を多層構造の現実のうちのひとつとして受け入れてみては、という提案が面白く読めました。このような話もあるので、ユングのなかでも特に神秘的な面に踏み込んだ内容(シンクロニシティ的な話もあり)が多い印象です。
2014/09/17
ふたば
大人が所属する共同体は完成されたものであり、子供はイニシエーションを経てその社会に所属する人間となる……という社会の形がもはや過ぎ去り、大人の世界すらも不完全で、発展しうるものである――その社会に所属するための通過儀礼は消え去り、青年は社会そのものの変革を担わなくてはならない。こういう段階において、見えそうで見えない《おとな》ボーダーのまえで羽ばたこうとしている状態が青春なのかもね、と読みながら思った。青春とは越境せざる段階なのね、と自分なりに「青春」の捉え方に落としどころがついた。
2014/05/21
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