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非常時のことば 震災の後で

非常時のことば 震災の後で

非常時のことば 震災の後で

作家
高橋源一郎
出版社
朝日新聞出版
発売日
2012-08-07
ISBN
9784022509918
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非常時のことば 震災の後で / 感想・レビュー

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寛生

【図書館】「混乱していればいるほど、文章を書く余裕なんかなければないほど、文章を書くべきである」(40)と高橋はいう。文章は《私》という己でもなく、地図上にある目的地でもなく、むしろ人間が歩き続けていく姿のようなものだと。生者は夥しい死の前にあって、神への信仰さえ失い、途方に暮れる最後の吐息を、物神でもなく誰かに聴かれるわけでもなく、死者の声に合わせていくとき、それが最後の祈禱となる。その瞬間に、生を重ね、その生者は死者のことばを書留め、柩におさめる。消えていく祈禱、柩を覆う炎。それこそ実に豊かな人生だ。

2014/11/29

Hideto-S@仮想書店 月舟書房

言葉を失う出来事に直面し、その先の新たな言葉を探す試み。書くことが存在理由になっている作家にとって、「言葉を失う」という経験は、自らの存在を揺るがすことだったのだと推察する。東日本大震災を契機に、「うまく書く」ことをやめ、自身の心と向き合いながら、本当に心に響く言葉をすくい上げようとする姿勢に作者の誠実さとナイーブな感受性、言葉に対する敬意を感じた。小説雑誌で連載された『文章教室』を書籍化したもの。初版2012年8月。

2023/02/19

メタボン

☆☆☆★ 再読。前回は文庫本で今回は単行本で。「僕たちは生きるときいつも何かを選ぶ。それは、それ以外の可能性を捨てることでもある。書くことは生きることに何より似ているのである。」「『あのこと』とは、僕たちの前に広がる風景から、子供を消し去ることだ、と言ってもいいのかもしれない。子供のいない世界は、未来のない世界だ。ただ、衰えてゆくだけの世界なのである。」「私は私を肯定するために、私以外の誰かを必要としていたのである。」

2023/01/22

けんとまん1007

ここのところ、特に半年前くらいからだろうか、”ことば”というものについて、いろいろ感じ考えるようになってきている。それは、自分が耳にする言葉、眼にする言葉だけでなく、自分が使う言葉についてもだ。それは、どういう立ち位置で、誰に向かって、どう伝えようとしているのかということ。そして、その結果はどうなのか、何故そうなのかということ。自分の感性を信じながらも、絶えず不安定な中にいることも事実。まさに今選挙に伴ういろんな言葉があるが、響いてくるものは全く無い。その答えもここにある。これではいけないのだ。

2014/12/14

ミッキー・ダック

3.11の震災後に、ことばや文章に対する感じ方・考え方がどう変化したかについて書いている。「ことば」に対する抵抗が強くなったが、それでも喋ること、書くことを大切にしたいという強い意志を感じた。普段私たちが喋っている時、実は考えて喋っているのではなく、教わったことを喋っているだけだという指摘は耳が痛い。自分の感情や社会の風潮に流されないよう、冷静に自分の奥底を覗き込んで何かを見つけるべく、兎に角書くことが大切だという主張に共感する。多くの文章が引用されているが、何をどう読み取るべきかも教えてくれる。

2012/10/07

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