降霊会の夜 (朝日文庫)
降霊会の夜 (朝日文庫) / 感想・レビュー
yoshida
誰もが年齢を重ねるほど、自身の良心に咎める事柄がある。あるはずだ。当の私はある。この作品は主人公は心の奥に蓋をしていた闇、幼少期の同級生、青年期の女性、二つの闇を突然招かれた「降霊会」で剥き出しにし、向かい合う事となる。戦後の復興期に経済的に成功した主人公の父。主人公はありあまる裕福さを幼少期から青年期に受けて育つ。しかし、悔いは残る。些細なことで別れた女性が、実は稀有な存在だったと思い知る。自分の忘れたい過去、悔やまれる過去。その選択をした愚かな自分。過去は変わらない。過去を認め未来を生きねばならない。
2016/02/11
佐々陽太朗(K.Tsubota)
人生をふり返るに「あのとき、ああすれば良かった」との思いが累々たる屍のように積み重なっている。おまけに人の心はその屍を直視するだけの強さを持っていない。忘れるのです。いや、忘れてしまうだけの強さも持ち得ず、無理やり忘れたふりをするのです。「---何を今さら。忘れていたくせに」 この一言が読者たる私の心に突き刺さる。浅田氏らしい小説でした。「角筈にて」や「ラブ・レター」に共通する浅田氏の情の世界がここにあります。
2014/12/01
ehirano1
「『さよなら』は大切な言葉だぜ。物事には何だって終わりがあって、そのときにはきちんと『さよなら』を言わなきゃいけない。そうしなければ、次のステージに立てない。だから人生は、『さよなら』の連続なんだ。(p304)」。流石、ホントうまいなぁと感嘆。著者の作品ではこういうのに必ず出会えるのことが楽しみの1つになっています。
2021/04/14
ehirano1
切なくも不思議な話ですが、『大切な何か』を浅田さんらしくべらんめぇ口調や人情溢れる描写で教えてくます。ツナグ(辻村深月)とは類似のジャンルだと思うのですが、また違った味わいで楽しめました。
2018/04/07
ehirano1
「憎み、怨み、ときに祟るのは生きている人。なぜならそれらは、肉体の存在を前提する俗世の感情だから。霊魂に許されるのは、誰にもぶつけようもない、怒りや悲しみや、自責の念ばかりなの(p276)」。なんか妙に納得させられたという不思議な感じです。うん、今もなんか不思議な余韻です。
2023/10/26
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