雪国 (角川文庫)
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『雪国 (角川文庫)』(川端康成/角川書店)
親譲りの財産で生活を送る妻子持ちの文筆家・島村が、雪国の温泉旅館に通い、駒子という芸者との関係を深める様子を直接的に書かず(比喩や背景描写でそれを匂わせつつ)綴った物語。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」——12月の初め、島村は雪国に向かう汽車の中で、病人の男に付き添う女性に興味を惹かれる。旅館に着いた島村は、芸者の駒子と落ち合って朝まで共に過ごす。
島村は、5月に駒子と初めて過ごした夜を回想する。人手が足りていなかった芸者の代わりに島村の部屋にお酌に来たのが、見習いの19歳の駒子だった。「君とは友達でいたい」と島村は言ったが、結局酔った駒子と一夜を共にしたのだった。駒子はその後まもなく芸者になっていた。
再会の翌日、島村は駒子の師匠の家に行った。汽車の中で見かけた病人は師匠の息子の行男で、腸結核で命が長くないため帰郷したそうだ。付き添っていた女性は葉子といい、駒子の知り合いだった。駒子は行男の許婚で、治療費のため芸者に出たのだと島村は伝え聞くが、駒子はそれを否定する。島村は滞在中、毎晩…
2018/10/22
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雪国 (角川文庫) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
淡くガラス窓に消える雪のようなものを見ていた。過透明な羽虫の翅は美しすぎてまるで死のようであったが、私はむしろそこに生き抜く逞しさのようなものも併せて見たような気がしている。 雪で閉じられたそのくにのおんなが、脚は容易く開いても、真に心を開くことはないだろう。つらく厳しい冬の寒さは、はっと息をのむ幻燈と、永遠のような啓示のような星の河をひらめかせすうと消えた。燃えるかなしみと、いじらしく故にみすぼらしいような生命力。その切なるひらめきの瞬間に立ち会えた、そのことは私にとっては何よりも慈しむべきものである。
2019/12/22
アキ
NHKドラマを見て再読した。ロケ地は我が故郷会津若松。駒子「不思議なくらい清潔な印象」の奈緒がいい。「悲しいほど美しい声」の葉子と踊りの師匠の不治の病に伏せる26歳の息子。3年のうちに変わりゆく女の身体。雪国の季節毎に見せる景色。「徒労だね」と発する言葉は駒子に向けたつもりが、自分にこだまする。鳥追い祭りの焚火と列車の中のともし火に浮かぶ葉子の顔、そして火事の中発狂する葉子。闇の中の夜光虫のように登場人物すべてが天の川の星々なのかもしれない。「さあと音を立てて天の河が島村のなかへ流れ落ちるようであった。」
2022/04/19
ykmmr (^_^)
色んな作品を手に取るようにして、新しい知識・感性等を入れていくように『読書』をしているが、それと同時に、『螢川』を皮切りに、以前読んだ作品も読んで、感想を残そうと思った。ミシマ『潮騒』と共に、高校時代初読→今に至る。まずは、あまりにも有名な冒頭。これにより、この小説の儚さ・哀愁が一行で表現されている。その雪国で、その『恋愛』の事実は道徳的に如何なものかと思う事ばかりだが、もう1人のヒロインを含めた主要登場人物3人が、細やかに動き、細やかに心情を変え、それぞれの在り方・人生の所在などを川端文学が作る。
2021/09/27
アキ
ノーベル賞受賞の対象作品。日本語の文章の巧さと優れた感受性で日本人の心の精髄を表現したと評された。冒頭の有名な文章から、雪深い列車の中の夕景色の鏡の中「指で覚えている女」と「眼にともし火をつけていた女」との間になにがあるのかと匂わせる始まりから妖しげ。駒子に魅かれていく島村は、遂に火事のなか葉子が落ちるのを見る。その夜空は天の川が掬い上げられる程近かった。部屋に羽ばたく蛾や雪国の冷水で晒した麻の縮、内湯で聴く葉子の謡が印象的な場面として頭に浮ぶ。物語としては謎めいたまま終わるが、心情を表わす表現が印象的。
2019/11/18
cockroach's garten
季節外れながら、久しぶりの再読。初読の時は淡い小説だと思って、全くつまらなかったと思っていた。まだ本を読み始めたばかりの初心な素人だったからか。その内、色々と雑多な本を堪能していくと本書には日本人の深部を見れる小説だと考えて再び目を通して行く。が、何分劇的な所が微塵しかないのでみるみる退屈していまい抛ること数回。ようやく読めた。甘美な優しさを醸し出しているのに、それを虚しく思わせる男と女のじれったさと微かな哀しき察し。会話文が噛み合わないのも二人の向かう方向が違う故。相通づるようで相反するいじらしい二人。
2017/07/05
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