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越年 岡本かの子恋愛小説集 (角川文庫)

越年 岡本かの子恋愛小説集 (角川文庫)

越年 岡本かの子恋愛小説集 (角川文庫)

作家
岡本かの子
出版社
KADOKAWA
発売日
2019-08-23
ISBN
9784041085615
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越年 岡本かの子恋愛小説集 (角川文庫) / 感想・レビュー

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じいじ@

表題作【越年】は昨年、谷崎・太宰・芥川・有吉佐和子ら懐かしい作家のアンソロジー、女体をめぐる『晩菊』に収載されていた。本作は、その『越年』を含む八つの短篇集。馴染みのない岡本かの子の小説だが、女と男の心の綾が、面白く描かれています。短歌をやられているので、情景描写が繊細で綺麗です。再読の【越年】だけに主人公二人の胸中が、より鮮明に読み取れた。終末に、女のもとに男からの詫び状(恋文)が届く。二人の本当の恋が始まる気がする。時には、こういうプラトニックな恋愛小説もいいものだ。

2020/05/10

麻衣

俺は淡い桜のはなびらを武器のように扱うあなたに恋を飲んだのだ。幸福の水に身を翻すことよりも、飼われることを選んだあなたがもうずっと昔から好きだ。まるで今気がついたかのように雨が降り始めた。慣れている。こんなこと、慣れている。女らしくあでやかに飼われるようになるわ。だからわたしの完成形を作ってよ。あなたは過去から喉を鳴らして笑っている。「女は殺してはだめよ」「何をいまさら」「殺すものじゃあないんだから」足元を照らすことはさすがに躊躇われた。ひぃふぅみ、金箔をあしらった着物を、躊躇いもなく踏みつけて歩くのは、

2020/08/21

ちぇけら

羊水の中を思いの儘に揺蕩っていると、鳥が飛び立つように眼が覚めた。僕はぼんやりした頭で女の名を呟く。喉の渇きがその声を掠らせ、不明瞭な響きだけが喉の奥に残った。「あたし何だか、ぽちぽち冷たい小粒のものが顔に当たるので雨かしらと思いましたらね、花が零れるのですわ」今では女の顔も容も覚えていない。覚えているのは、女から漂う夏の匂い。かつて僕は女を強く憎んでいた。だがいつしか愛の透徹を誓っていた。女の記憶が薄れていくぶん、女への気持ちが濃くなっていく。思いを伝えられぬまま、積もって、募って、胸がきちきちと鳴る。

2019/10/07

あ げ こ

その言葉の強健さよ。決して衰えてしまう事のない、その迫力と凄み。漲っている。存分に潤い、行き渡っている。何もかもが匂い立つように艶めかしく、濃い。ずっしりと、重い濃さ。ねっとりと絡みつくような、執拗な濃さ。摂取し切れぬほどに、濃い。おさまり切らず、溢れ出てしまうほどに、濃い。すべてを強烈に感じる。生と死の美と醜、臭い、ぬめり、煌めき、凄まじさやしつこさやたくましさ。欲望も虚しさも、憤りも喜びも。迸る様も、超然と咲き誇る様も、悶々と溜まり、滞る様も、貪欲に吸収し、蓄える様も。むくむくと育ち、豊艶に香る様も。

2019/09/04

「金魚撩乱」「老妓抄」「家霊」「越年」は再読。【金魚撩乱】再読。非現実的な美女に気化して行く想い人。敵愾心、嫉妬、憎しみを孕むその愛は惑い、宙に浮き、手に入れることは叶わない。顎の裏に張り付いた桜の花びらの幻に囚われて、男は女を得られぬ代償にこの世で最も美しい金魚を創造しようと企てる。人工の、滅亡の一歩手前の美を求める心は、男を狂わせ、女を現実から遊離させてゆく。不意に訪れた企みの成就。撩乱する金魚が見せたのは果たして絶望か、恍惚か。初めて読んだかの子作品。何度読んでも良い。ずっとずっと好き。

2019/09/02

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