バルタザールの遍歴 (角川文庫)
バルタザールの遍歴 (角川文庫) / 感想・レビュー
きなこチロル
初作家さん&1991年デビュー作で再版。ウィーンの公爵家に生まれたメルヒオールとバルタザールは双子だけど一つの体に2つの心を持つ人間。ナチに目をつけられてウィーンから逃げる。1939.9.1で締め括られていてその日はナチスがポーランドに侵攻し第二次世界大戦開始。ストーリーが幻想的でよく分からないまま読了…
2020/11/30
かすり
バルタザールとメルヒオールは一つの肉体を共有する双子。単純に解離性同一性障害かと思いきや、父の死から物語はファンタジー色を帯びる。けれどこの設定は物語の装飾でしかなく、ウィーンの貴族が時代に翻弄されながら如何に没落していくか、が主眼。語り手が入れ替わる構造は慣れが必要だけれど、戦争の足音に怯えながらもどこかコメディタッチの物語にぐいぐい引き込まれていく圧倒的筆力はデビュー作とは思えない。作中にもあるが、キュビズムの絵画を鑑賞したような、不思議な読後感。
2020/05/28
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