KADOKAWA Group

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イノセンス

イノセンス

イノセンス

作家
小林由香
出版社
KADOKAWA
発売日
2020-10-01
ISBN
9784041095669
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「イノセンス」のおすすめレビュー

襲われた自分を救った恩人を見捨てて逃げてしまったら…世間からの誹謗中傷と自らの過ちに向き合う術は

『イノセンス』(小林由香/KADOKAWA)

 理不尽な暴力を受けた者は、肉体だけでなく、心にも深い傷を残す。その心の傷は復讐によって癒えるのか。そんな暴力によって傷を負った人の魂の救済についての物語を描いてきた作家、小林由香氏。最新作『イノセンス』(KADOKAWA)もまた復讐と救済についての物語だ。主人公である大学生、音海星吾は自分自身が過去に罪を犯し、その過去にどこまでもつきまとわれ、復讐を受け続けているかのような日々を送っている。

 高校受験を控えた14歳の秋、星吾は予備校近くの繁華街で恐喝に遭う。ナイフをちらつかせる3人の不良に怯えながら財布を出そうとしたとき、通りすがりの見知らぬ青年が星吾を助けに入った。しかし、その青年、氷室慶一郎は不良たちに凄惨な暴力を受けた末、ナイフで刺されるという事態に。恐怖のあまりパニックになった星吾は救急車を呼ぶこともせずに現場から逃げ去り、現場に置き去りにされた氷室は出血性ショックで死んでしまう。未成年だった3人の加害者たちは逮捕、2人が逆送されて実刑判決を受け、1人は中等少年院送致となった。

 世間は氷室を勇…

2020/9/29

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イノセンス / 感想・レビュー

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starbro

小林 由香、三作目です。本書は、悲劇の連鎖、哀しい社会派ミステリでした。思春期、中学生の頃に負った心の傷は、一生癒される事はないのでしょうか? https://www.kadokawa.co.jp/topics/4870

2020/11/09

nobby

「僕に人を好きになる権利はありますかー。」こんな哀しい問いに答えなんて出せる訳がない…そして僕は、こんな難解な物語を紡ぎ出す小林さんが絶対に苦手だ…中学時代に自分の代わりに刺された青年を見捨てて逃げた少年の抱える呪縛…もちろん「何故逃げた!?」と正論ぶった批判をするのは簡単だろうが、当人の恐怖や被害者や関係者の葛藤は計り知れない…そもそも一番に責められるべきは襲った悪者であり、嫌悪されるべきは勝手な誹謗中傷を繰り返す者だ…ようやく訪れた穏やかな光を噛み締めながら、彼の夢見た普通を暮らす自分の今に安堵する…

2020/10/28

しんたろー

中学生・星吾が3人組の不良にカツアゲされるが、通りかかった青年が止めに入る。が、青年は刺され、恐怖に駆られた星吾は逃げ出し、青年は死亡。見殺しにした事を周囲から誹謗中傷され、人と関わらずに生きてきた星吾は大学生になり、同級生・紗耶、教授・宇佐美、バイト仲間・光輝との関わりの中で少しずつ変化するが、不良たちが殺され、星吾も命を狙われる…こう書くと重いが、4人の切ない事情が絡み合ったヒューマンドラマが強く「自分だったら?」と考えさせられた。ミステリの終結に関しては駆け足過ぎた気がするが、筆力の高さも光る佳作。

2020/11/25

いつでも母さん

今回も考えさせられる作品だった。小林さんの作品はどうしてこんなに哀しい人が多いのだろう。罪を憎んで人を憎まずとか赦しとか・・揺れ動く思い。私の中に明確な答を持たないから苦しいのだ。優しい出来た息子を突然喪った家族や恋人が、それから先を恨みだけで生き抜くのは辛すぎる。自分の所為で不幸を引き寄せてしまうと、芽生えた希望が滲む人生も酷だ。後悔と贖罪。還らぬ命の重さを感じながら真摯に生きるしかないように思う。あなたなら?小林さんに今回も又問われているが、光射すラストはいつになく暖かい感じだった。

2020/10/21

イアン

★★★★★☆☆☆☆☆断罪をテーマとした小林由香の長編。14歳の時に、不良に絡まれた自分を助けてくれた青年を見殺しにしてしまった主人公・星吾。その後世間から大バッシングを受けた彼の元に、姿なき脅迫者の殺意が忍び寄る…。被害者でもある星吾の行為がまるで殺人の加害者であるかのように誹謗される描写に、どうしてもリアリティの無さを感じてしまう。最後は救いのある結末だなと思った反面、イヤミスとして物語を締めるなら真相の一歩手前で切ってもよかった。久しぶりの息子からの電話にしょうもないギャグを放った父の勇気に恐れ入る。

2021/01/21

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