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アンブレイカブル

アンブレイカブル

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作家
柳広司
出版社
KADOKAWA
発売日
2021-01-29
ISBN
9784041109410
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「アンブレイカブル」のおすすめレビュー

暴走する特高と治安維持法。その犠牲になりながらも信念を貫く男たちを描く

『アンブレイカブル』(柳広司/KADOKAWA)

「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ、又ハ情ヲ知リテ之(これ)ニ加入シタル者ハ、十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」

 1925年に制定された悪名高き治安維持法第1条の条文だ。この共産主義運動の抑え込みを目的としていたはずの法は、やがて国家の意に沿わない人間を取り締まるために使われるようになり、1945年に廃止されるまで数十万人がいわれなき罪によって逮捕、そのうちの1000人以上が拷問、衰弱、傷病によって命を落としたとされている。

 累計130万部突破の人気シリーズ「ジョーカー・ゲーム」シリーズで知られる柳広司氏の新作『アンブレイカブル』(KADOKAWA)は、この治安維持法の犠牲となり、歴史の闇に葬られた人々を描く連作集だ。

 第1話「雲雀」では労働者の視点からプロレタリア文学の旗手、小林多喜二が描かれる。銀行員として働きながら小説を書く多喜二は、“地獄”と呼ばれる蟹工船の実態について調べていた。しかし、その取材を受けるふたりの労働者は、特別高等警察(通称“特高”)を管轄する…

2021/1/29

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柳 広司 やなぎ・こうじ●1967年生まれ。2001年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞受賞。09年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。「ジョーカー・ゲーム」シリーズ他、『新世界』『象は忘れない』『太平洋食堂』など著書多数。

  「韓国映画を最近よく観ているのですが、光州事件のような近過去の歴史や権力の腐敗のような今も続く社会問題に切り込みながら、すごく面白いエンターテインメントに仕立て上げている作品がたくさんあるんですね。映画にできるんなら、小説にだってできるはずだ。そういう思いが出発点にありました」  大正末期から終戦までの20年間、数十万人もの人々に「反国家的」というレッテルを貼り、獄中へと送り込んできた治安維持法。累計130万部突破の人気シリーズ「ジョーカー・ゲーム」の時代にも通じる最新作は、治安維持法の犠牲となった実在の文化人に光を当てた連作集だ。 「太平洋戦争中、多くの作家や言論人が治安維持法と特高警察によって殺害されました。けれども彼らはいずれも小説家や…

2021/2/11

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アンブレイカブル / 感想・レビュー

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starbro

柳 広司は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本作は、内務省クロサキ・プロレタリア文学連作短編集でした。オススメは、『虐殺』&『矜持』です。 https://www.kadokawa.co.jp/topics/5355 https://kadobun.jp/feature/interview/f407f73zug0k.html

2021/03/14

utinopoti27

1925年、成立当時は適用が超限定的だった治安維持法は、やがて国体護持の名のもと恣意的に運用されていく。本書は、そんな不穏な時代を背景に、この法律の標的にされた実在の著名人たちを描く4部作だ。それぞれ異なる立場で活動する彼らを犯罪者に仕立て上げるのは、内務官僚・クロサキという人物。国家権力による理不尽な弾圧に必死で抗うアンブレイカブルたちに思いを馳せる時、読み手は単なるミステリの枠を超えた空恐ろしさを、肌で感じることになるだろう。なぜなら、それは現代日本における我々国民一人一人の明日かもしれないのだから。

2021/08/09

修一郎

治安維持法が施行されていたのは1925~1945のたかだか20年間だ。その間何十万人もの一般市民が牢獄送りになった。その成立から廃止までを小林多喜二/鶴彬/横浜事件/三木清という囚われ側【敗れざる者】から綴った4篇。憲兵と特高の区別もつかない知識レベルだったがとても興味をそそられた。「手と足ともいだ丸太にして返し」鶴彬-凄いね。「幸福を武器として闘う者のみが斃れてもなお幸福である」-三木清。柳広司さんは,三木清を歴史上の人物として浮かび上がらせたいのだそうだ。興味がわいたので三木清を読んでみようと思う。

2021/05/20

モルク

治安維持法の成立によってアカと呼ばれた政治犯たち。小林多喜二、鶴彬、三木清など実在の人物とそのいずれにも関わってくる内務省参事官クロサキの連作短編集。満鉄勤務の志木が主人公の「虐殺」が印象的だった。次々と人がいなくなっていることに気づくが、まわりはあたかもその人が最初からいなかったがごとく振る舞っている。失踪者の共通項に気づいたとき時は既に遅く…刻々と迫る恐怖にこちらも悶える。容疑など二の次。証拠など作ればいい。とにかく逮捕すれば…多くの有能な者がその餌食となる。日本の黒歴史だ。

2022/01/30

trazom

小林多喜二、鶴彬(反戦川柳作家)、和田喜太郎(中央公論・編集者)、三木清をテーマにした四つの短編集。治安維持法が成立した暗い世相を、独特の雰囲気で描く読み応えのある小説だった。当初は多くの成果を挙げた特高警察は、共産党の壊滅などで対象者が減少する中、検挙者の実績を上げるため、度重なる法改正と解釈拡大によって取締り対象を広げてゆく。「治安維持法は、社会の敵だけでなく、嫌いな者にも適用が可能だった」という言葉にゾッとする。手段が目的になるのが組織の恐ろしさ。なぜ今、この小説が上梓されたのかを考えてみたい。

2021/04/17

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