さよならに反する現象
「さよならに反する現象」のおすすめレビュー
乙一節が全開! 唯一無二の世界観とテクニックにしびれる、恐ろしくて切ない短編集『さよならに反する現象』
『さよならに反する現象』(乙一/KADOKAWA)
乙一氏の『さよならに反する現象』(KADOKAWA)は5つの短編小説から成る、200ページ弱の書物だ。そう聞くとボリュームが少ないと思われるかもしれないが、ひとつひとつの話の密度や濃度やいつも通り、いや、いつもの乙一作品以上ではないか。リーダビリーティーの高い文章、ウィットに富む登場人物たちの台詞、心がざわつくホラー的な展開など、乙一節が全開になっている。以下、5篇のうち2つをピックアップして、読みどころを紹介する。
劈頭に置かれた「そしてクマになる」は、会社をリストラされたものの、妻や子供にそのことを言いだせずに苦悩する男性が主人公。男は土日になると、部下がミスをしたなどの嘘をついて、会社に行くフリをする。実際は、男性は着ぐるみをかぶって風船を配るバイトをしているのだが、それは家族には内密にしているのだ。平日は公園で暇をつぶし、似たような境遇の人と知り合うというのは、黒沢清氏監督の映画『トウキョウソナタ』などにも描かれた光景だ。
ある日彼が住宅展示場で風船を渡していると、自分の妻と子供が見知ら…
2022/6/26
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さよならに反する現象 / 感想・レビュー
starbro
乙一は、新作中心に読んでいる作家です。乙一作家生活25周年記念(これが記念作とは少し物足りないですが・・・)短編集、オススメは、『家政婦』です。 https://www.kadokawa.co.jp/product/322108000253/
2022/04/30
旅するランナー
乙ですね。死と変容に関わる5短編。語り口は、あくまでも優しく微笑ましい。そして、そこはかとなき寂しさがある。おぞましい切なさ。心霊現象も前向きにとらえられそうです。
2022/10/28
美紀ちゃん
乙一さんの文章が読みやすくて好き。 納得できる、じんわりした怖さが乙一ワールドなのかも。 クセになる。 リストラのお父さんは、秘密を抱えたままで 切なくて心配でドキドキしたけど、 話し合うって大切。 引き込まれた。 おそ松さんのイヤミ。「しぇー」だね。 家政婦、死者は、見えたら怖い。 その恐怖よりも、 イケメンと毎日一緒にいられる幸せが勝つ話は、 楽しくて怖くてドキドキした。 ラストの女子大生に取り憑かれた話は、ちょっとルンルンじゃん!と思ったけど やはり恐ろしい話だった。
2022/05/14
いつでも母さん
作家生活25周年!乙一作品を読むときはちょっと構える私も。怖いのか?そうでないのかー短編5話。まさかおそ松さん登場とは・・『そしてクマになる』『家政婦』が好み。ラストの『悠川さんは写りたい』も好かったが、ラスト一行が怖い。装幀がイイ感じでそこも好きだった。
2022/05/06
たぐっぴ
久々の乙一さん。ページ数の少ない短編集でしたが乙一さんらしさが出ていて手が止まりませんでした。悠川さんの話が特に良かったと思います
2022/09/10
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