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悪と無垢

悪と無垢

悪と無垢

作家
一木けい
出版社
KADOKAWA
発売日
2022-10-28
ISBN
9784041120750
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「悪と無垢」のおすすめレビュー

なにをしても一切罪悪感を持たない“彼女”は、周囲の人間を不幸へと陥れる……。一木けい最新作『悪と無垢』

『悪と無垢』(一木けい/KADOKAWA)

 人は誰だって、小さな“罪”を犯しながら生きている。自分を大きく見せるための嘘だったり、怒りのあまり暴言を吐いたりと、それらは罪とも呼べないくらいのものかもしれない。でもそれに対して人は、罪悪感を抱くことがある。どうしてあんなことをしてしまったのだろう……。その気持ちが後悔や反省へとつながることで、自らを律していく。つまり罪悪感というものは、人が人として正しく生きていくため、生まれながら備えている善性なのかもしれない。

 でも、なにをしても一切罪悪感を抱かない人がいたとしたら――。

 小説『悪と無垢』(一木けい/KADOKAWA)で描かれるのは、まさにそういったひとりの女性の姿だ。彼女は他人を陥れ、次々に不幸へと突き落としていく。しかも、どこまでも無邪気に。まるで退屈しのぎをしているようで、だからこそ明確な悪意を持つ人の何倍もたちが悪く、恐ろしい。

「奈落の踊り場」と題された章の主人公は、生きることに疲れ切った主婦・ユリ。甘やかされて育った夫はワガママで、ユリのことをナチュラルに見下している。そんな夫を育てた義…

2022/11/4

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悪と無垢 / 感想・レビュー

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さてさて

『あれだけのことをしてきたにしては、あっけない最期だった』。そんなひとりの女の死を冒頭に描くこの作品。そこには”その女は、悪意なく、歌うように噓をつく”という陰の主人公とも言える英利子と、彼女に翻弄された人達の生き様が描かれていました。近寄りたくないと本に目を伏せたくなるような荒んだ暮らしの描写に嫌悪感が抜けなくなるこの作品。英利子がつく噓に読者もはめられていくのを感じるこの作品。全てが解き明かされる結末に、それでも『意味のない噓を吐き続ける』英利子という人物がどこまでも謎めいていくのを感じた作品でした。

2023/01/26

いつでも母さん

恵まれない家族関係をこれまでも描いて来た一木さん。今回も派生してイヤ~な感じの親子関係っていうか、この母が怖い。おかしい。変だ。どれも違和感ありありで、どこに向かうんだろ?って正直しんどい。誰が本当を語っているのか、そもそも本当って何?こんなにスルリと生きている女は他の作家さんでもいるが、同じ匂いがするのが何ともざわりとする(褒めてます)『不可解で無秩序』最後の言葉に、私はとうにお手上げだ。同じ空の下にいたくない・・そんな感じ。

2022/11/18

のぶ

何とも分かりづらい内容の本だった。自分の解釈が間違っているかもしれないが、汐田聖という新人作家が不倫妻のブログを目にする。内容はありきたりながら、そこに登場する「不倫相手の母親」に感情をかき乱される。彼女こそ聖が長年存在を無視され、苦しめられてきた実の母親だった。その行動が収められた5つの話に書き綴られている。どの話もとても内面的なもので、登場人物の感情を掴むのが難しかった。作中には汐田聖も登場するが、その存在も理解しがたく感じた。いずれにせよ共感できず、読後感のいい話ではなかった。

2022/11/04

fwhd8325

応援していたアイドル歌手が、これまでの路線を変更したような迷いがあります。もちろん、好きな作家さんですから面白く読むことはできたのですが、私の中の戸惑いは、作品に追いつくことができたのだろうかと、じっと考えています。個人的には冒頭の「奈落の踊り場」でガツンとやられたなと思います。そこからは少し散漫になりながらも最終章「きみに親はいない」でホッとしたなと言うのが感想です。

2023/01/07

モルク

最高に嫌な女の登場。連作短編集の最後で1つに繋がる。夫がいながら愛した男の母であったり、海外赴任先で語学力のある頼りになるマダム、無視されいじめを受けていた女子をこっそり助ける「カゲトモ」など様々な時代場所で登場してくる英利子。それぞれの話の主役ではないが、強烈な脇役、それが次第に主役を食う。こんなにサイコパスには会いたくない。会いたくないと言いながら物語に引き込まれる。これはホラーよりきつい!

2023/01/15

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