戦中派不戦日記 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)
戦中派不戦日記 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫) / 感想・レビュー
buchipanda3
夏の夜にごろっと寝っ転がって読む。中身に身構えてしまわないように姿勢を楽にした。昭和20年、当時医学生だった山田風太郎氏の1年間の日記をまるまる載せた本。終戦の年の東京の様子などに加えて、社会的風潮に対する著者の内面的葛藤を包み隠さず吐き出している姿がやはり印象的。あとがきでその時の青臭さを反省しているが、そこにはあの状況下においても見せる人間の硬軟な滑稽さがあり、それこそが嘘偽り計算の無いまっさらなものと感じた。結構、長時間な読書となったが、その疲弊感も含めての作品なのだと思う。読書日記の面もあった。
2021/08/03
シュラフ
日記の書き方。自分中心に書くのか、周囲中心に書くのか、ふたつの書き方があると思う。この日記は後者である。だからこそ当時の空気というものをそのまま伝えている。無防備のままB29による空襲にさらされる日本国民。敗戦による虚脱感。そして廃墟の中からの日本の復興。日本人として知らなければならない歴史である。山田青年が考える日本の敗因は、欧米に遅れた科学と根拠のない不合理な精神。戦後、技術大国となったものの我々の精神はどうなっただろう。太平洋戦争という大惨禍を経験した日本人はこれを貴重な教訓として学ばねばならない。
2018/10/10
masabi
【概要】一医学生による昭和20年の日記。【感想】友人との語らいや試験での辛苦といった個人史だけでなく人々の思いや生活を記録していて当時の雰囲気を味わうことができる。戦況は政府発表や新聞でしか知れないが月を追うごとに生活物資が乏しくなることが何よりも物語っていた。非合理的な信念も物質豊かな今でこそ馬鹿げた代物だが当時としては精神的な支柱になっていたのだろうか。
2019/12/02
ぐうぐう
戦争を知らない世代にとって、あの戦争とは、結果と教訓という前提に立った歴史としてしか知りようがない。そしてそれは、戦争を体験した人々にとっても、当時の心境といった目に見えないものは簡単に書き換えられてしまうものなのかもしれない。そういう意味で、若き医学生であった山田風太郎の昭和二十年の日記をそのまま収録した、この『戦中派不戦日記』は、一青年の感情と思考が、矛盾すらも恐れずに内包しながら、実に赤裸々に綴られているのは貴重だ。戦局に高揚し、ときには達観しながらシニカルな表情を見せたかと思えば、(つづく)
2011/05/28
たみき
昭和20年。医大生山田さんの日々。印象的な箇所がたくさんあった。色々思うところがあり感想をまとめられず。これはずっと読み次がれるべき日記。「きっといいことあるよ」と言ってた女性、物ごいをしていた男の子、戦後手のひら返しで冷たくされた軍人さん。皆さんその後どうなったんだろうか。自分を戒めるためにも何度も読まなければならない本だと思った。読み終えた後、腹の底からグワワッと込み上げるものがあった。これは言葉で表すとどんな感情なんだろか。ボキャブラが乏しくて表現できない。
2013/11/07
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