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兎の眼 (角川文庫)

兎の眼 (角川文庫)

兎の眼 (角川文庫)

作家
灰谷健次郎
出版社
角川書店
発売日
1998-03-20
ISBN
9784043520015
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「兎の眼 (角川文庫)」のおすすめレビュー

涙なしでは読めない不朽の名作。多様性に戸惑い、生き方に迷えるすべての人にすすめたい1冊

『兎の眼』(灰谷健次郎/角川文庫)

 歩み寄っても心を開いてくれない人や、努力しても分かり合えない人、住む世界が違う人と出会ったとき、距離をとったり無視したりすることは簡単だ。「多様性」への理解が求められる中でも、困難さを感じる相手を前に、億劫さを感じてしまうこともあるだろう。だがそんな姿勢は、この世界で暮らすことを放棄するのと、イコールなのではないだろうか――読むたびにそんな問いを私に投げかけ、「真摯に生きる」を怠けがちな私の肩を優しく叩いてくれるのが、『兎の眼』(灰谷健次郎/角川文庫)だ。

『兎の眼』は、児童文学作家の灰谷健次郎氏によって1974年に刊行された小説。舞台は、とある工業地帯の老朽化したゴミ処理所がある町の小学校だ。煙霧で空気は淀み、人家にも学校にも処理所から出る灰が降る。処理所の隣には、危険な仕事を負う臨時職員が暮らす長屋があり、小学校には、彼らの子どもも、役所の正職員や商店街で店を営む人、会社経営者の子どもも通う。つまり、子どもの生活格差の大きい小学校だ。

 主人公は、大学を卒業して赴任したばかりの小谷芙美先生。医者の一人娘で泣き虫…

2022/9/30

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兎の眼 (角川文庫) / 感想・レビュー

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kaizen@名古屋de朝活読書会

処理場があり,その側に現業員の住む住宅がある。処理場のある小学校に勤務になった小谷芙美。ハエをそだてる生徒、鉄三。鉄三の保護者である祖父のバクじいさん。型破りの先生足立。役者が揃っている。解説は最初の理論者版の編集者だった小宮山量平。理論社版のあとがき,新潮文庫解説の今絵祥智の文章を引用。第一次世界大戦、第二次世界大戦と,志賀直哉、横光利一、小林多喜二について論じ、その先に灰谷健次郎を位置づける。壮大な展開に驚く。生活と教育と人間らしさについて再考。発見角川

2013/08/20

のっち♬

大学出の新任教師の視点で描かれる小学生との心のふれ合い。特に存在感があるのは足立先生とバクじいさんで、生徒たちや孫に温かい愛情を示す二人の悲痛な過去は現在が犠牲の上に成り立っている事実を訴えかけてくる。問題児やちえおくれの子たちに対する優しい配慮もこのテーマと密接に繋がっている。「心に悩みを持っているのが人間であるとするならば、われわれとてまた同じ障害者です」—ゴミはメタファーの要。迷惑は誰もが排出するしとばっちりを受ける、事故を恐れてばかりいては何も出来ない。本書は現代が忘れつつある不器用で美しい歌だ。

2021/11/12

二代目 びあだいまおう

新卒女性教師、小谷先生たちの奮闘に感動!元教師の著者だからこその心理描写と言葉が面白く、一気読みお薦めです‼️サンテグジュペリが『愛し合うとは、互いに見つめ合うことではなく、互いに同じ方向を見やること』といったが、本気で寄り添うってそういうことでしょう‼️キーワードは『ハエ』そう、全人類が嫌うハエです!いい話‼️ 足立先生がまたいい。いい先生についた生徒は幸せ😃💕今もこんな先生いるんでしょうね、宝物がたくさんつまってる子供達の未来をよろしくお願いいたします🙇

2018/09/30

Willie the Wildcat

ジーンときますね。子供たちの純粋な気持ち。カラスの貯金、空き巣被害の小谷先生になけなしのお小遣いを渡すシーン。みなこちゃんとの出会いと別れ。そして鉄三が心を開く。子供に限らずちょっとした行き違いから発生する先入観、差別、区別・・・。本来人の持つ心の優しさ、温かさ。本質を見極める「兎の眼」。子供を信じ、人を信じて生きていきたい、生きようよ!って感じさせてくれます。本当に気持ちのいい本です。

2011/12/29

katsubek

約30年ぶりの再読。あとがきによると、1974年刊行だから、七、八年後に読んだことになる。それから30年経っても、みずみずしさは変わらない。「ぼくは心がずんとした」には、やはり感動を覚える。こういう感覚を忘れずに持ち続けたいものだ。勇気をもらえる一冊。また、いつか読みたい。

2013/09/23

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