KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

沈黙,アビシニアン (角川文庫 ふ 18-2)

沈黙,アビシニアン (角川文庫 ふ 18-2)

沈黙,アビシニアン (角川文庫 ふ 18-2)

作家
古川日出男
樋上 公美子
出版社
KADOKAWA
発売日
2003-07-25
ISBN
9784043636020
amazonで購入する

沈黙,アビシニアン (角川文庫 ふ 18-2) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

masa

この国の音楽は惨殺された。不要不急と蔑まれ沈黙を強要された。だからって、世論に日和って不貞を理由に仲間を解雇するバンドマンは楽器棄てて会社員になれ。ことばにはマッハの衝動がある。つまり音がある。音が秒速340mで意味を生む。つまり意味は音の後付けに過ぎない。やがて音に宿る生存本能が歌になる。つまりそれがルコだ。今日も何処かで飢えて死んで行く子供達を平気でシカトしてる神様が俺達の夢に興味持つ訳ねぇだろ!願う以上に自分で変えろ!つまり祈るより歌え!沈黙の反対は浮唄だ!

2022/08/27

さっとる◎

1作目「13」2作目「沈黙」3作目「アビシニアン」。最初の3作で「自分は何を物語っていくのか?」ってのが、ちゃんとある。色を、音を、声を、耳を、嗅覚を、文字を。5感と肉体を総動員して生き抜くってことを。音楽と映画と物語、エンタテイメントであるそれらへのリスペクト。悪と愛がわかりやすいのは初期作品だから?にしても鳥肌がたつ。「音楽だけが悪を」。音楽と文学を題材に、日出男以外の誰がこんな物語をつくれるだろう。悪をほふるその行為、そのかたちにも悪は胚まれる、悲痛。言葉は通じなくても声は伝わる、歌は届くのだ。

2017/02/25

田氏

『アビシニアン』は『沈黙』のスピンオフという位置づけ(解説によれば)だそうなのだが、読後の「なんか持ってかれた」感は、『アビシニアン』に軍配が上がる。どんな小説だったか、と考えようとしても定まらなくて、頭のなかの街に靄をかけられたような気持ち。でもその靄は、山の上で雲にまかれたのとおなじ凛冽で透明なにおいがして、もうしばらくその中に居たいと思えて、じきに晴れてしまうと思うと名残惜しくなる。視界が開けて見える景色は、靄に包まれる前と違っているのだろうか。何かが失われていて、そのぶん澄んで見えるかもしれない。

2020/05/04

hide

世界を創るのは言語では無く、音楽や物語、詩から紡ぎ出される思考なのだろうか。獰猛な舌から生じる言語は凶器であり器官であり、音に乗せて文字の意味すら無効にし、世界を再構築する。本を閉じて耳を澄ませる。聴こえてくるのは、悪なのか愛なのか。世界がひとつ拓ける素晴らしい作品。

2017/11/17

不在証明

かつての15歳の少女にはことばが足りなかった。生き延びるためにそれが必要だった。書物の中に探した程度では、ぜんぜん足りなかった。大人への無力を知り、泣いて、学んで、十億年が経った。ここがはじまり。「わたし」が生まれた。「わたし」は「わ」と「た」と「し」から成る文字の組み合わせ、そこに生じる意味付けではない、「私」「I」-文字は剥がれ落ち、「わたし」-ことばが顕れる。ことばは物語の輪郭をなぞり、世界の仕組みを変容させる。文字は残らない。

2016/03/31

感想・レビューをもっと見る