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「待つ」ということ (角川選書 396)

「待つ」ということ (角川選書 396)

「待つ」ということ (角川選書 396)

作家
鷲田清一
出版社
KADOKAWA/角川学芸出版
発売日
2006-08-31
ISBN
9784047033962
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「待つ」ということ (角川選書 396) / 感想・レビュー

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夜間飛行

「待つ」ことには苦しい記憶しかない。息子の出生時、医師から或る事実を口止めされ、二三日誰にも言えなかった時。息子が小学生のとき白血病を患い、一緒に遊ぶことも歩くことも叶わなかった日々。武蔵は〈待たせる〉ことで相手の自壊を〈待った〉という。小次郎が苛立ちを否定しながら待ったのに比べ、武蔵は寝ながら待った。私の場合、小次郎と違って待つことしかできなかったのがむしろ救いだったかも知れない。今は子の成長に期待しながら生きているが、《予期が潰えた後に立ちあがってくる待機としての「待つ」》へと向かっていくのだろうか。

2017/06/12

よこたん

“待ちわびて、待ちあぐねて、待ちかねて、待ちくたびれて、待ち明かして、待ちつくして…というふうに、あてどなく待つときの想いを表わす言葉は、苦くも豊穣だ。” 以前鷲田さんのエッセイを読んで、文の綴られ方がとても好みだったので手に取った。普段棚にも近づかない100番台…哲学。前半は引用例もわかりやすかったのだけど、後半は完全においていかれた。『ゴドーを待ちながら』の章はもう、チンプンカンプン(笑) 文章は好きなのに内容が入ってこないというか理解できないかなしさに包まれた。現代は、待たない待てない社会なのね。

2020/11/07

せ~や

『「聴く(×聞く)」事は「待つ」事』という言葉がとても印象的。期待通りの事が起きるのかも分からない、どう進んでいくかもわからない、それでも焦らずじっと待ってみる。冒頭にもある通り、最近は目の前の成果を挙げたり求められる事が多い。遠い未来の話ではなく、目の前の「今」ばかりに焦点が行くようで、なんだかせわしい感じ。「人生は種まき」というある人からの言葉を、ふと思い出した。花が咲くかも、いつ咲くかもわからないけれど、蒔いて待つ。前半は面白かったのですが、3/4以降ぐらいから何を言ってるのかよく分からず。☆4.5

2023/06/04

みねたか@

〈待つ〉とはどんなことなのか?待つ人にとっての意味は何か?と探求する論考。日本語というのは、こんなにも味わい深い表現ができるのだと感嘆する。理詰めだけだはなく、エモーショナルなだけでもない。行間から伝わる情感、多彩な例示から生まれるリズムが「腹落ちした」と錯覚させる。しかし、すぐに安易な納得を戒めるように、確言は一つの推論となり、推論は次の問い建てにつながる。探求の渦に翻弄された先に現れる“待つ者が待つことそのことを放棄したところから始まる本当の〈待つ〉”これは深い。でも面白い。

2021/11/25

Inuko

そういえば最近待つことが少なくなったし、社会では急かされる方が多いように感じているが、「待つ」という言葉に美しい響きを感じて本書を手に取った。「待つこと(期待)を放棄するなかではじめて、待つということのほんとうの可能性が到来する」のだという。イニシアティヴの放棄。それは、一つに、未知の事態に開いているということ。他者をわたしのうちに併合・同化するのではなく、逆に自己を差し出すこと。<わたし>独りが関係の意味を決めるのではなく、他者との関係のなかにみずからを据え、他者を迎え入れると同時に、じぶんの理解を

2021/12/12

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