東京百景 (角川文庫)
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馬鹿はおまえだよ/月夜に踊り小銭を落として排水溝に手を伸ばす怪人【最終回】
又吉直樹の日々の暮らしの中での体験と、同時に内側で爆発する感情や感覚を綴る本連載。これら作品も少なからず収録したエッセイ集『月と散文』が無事発売され、いよいよ今回で最終回を迎える。ご愛読いただいた読者の皆様、どうもありがとうございました。またお会いしましょう。
10年振りにエッセイ集を発表することになった。題名は『月と散文』になった。オフィシャルコミュニティと、まったく同じタイトルになってしまうので、なにか別のものでもいいのではないかと考えたが、これ以上にしっくりくるものが思いつかなかった。 『書いてるときだけ生きていた』 『月とひとり言』 『不要不急の人間賛歌』 『僕が不在のみんなのための平等な世界』 『一人で呑んでる』 『綾部さん、お元気でしょうか?』 『ランプ』 『日々、罅(ひび)』 『まいど!おもしろエッセイやで!!』 『自祝』 どうだろうか? 『書いてるときだけ生きていた』、『月とひとり言』などであれば、本として完成すれば、自分の本として愛せたと思う。だが、『不要不急の人間賛歌』、『僕が不在のみんなの…
2023/4/6
全文を読む焚火がしたい/月夜に踊り小銭を落として排水溝に手を伸ばす怪人⑱
又吉直樹の日々の暮らしの中での体験と、同時に内側で爆発する感情や感覚を綴る本連載。これら作品も少なからず収録したエッセイ集『月と散文』の発売が来る3月24日に決定した。名著『東京百景』以来、実に10年ぶりとなる最新刊には未収録のお話を今回はお届けします。
焚火がしたい。焚火に薪をくべながら、いかにも焚火をしているような表情を浮かべたい。そんな私を見た人は、「あの人は焚火に慣れているんだろうな」と思うことだろう。
しかし、私は自分で焚火をしたことが一度もない。誰かに用意された焚火を眺めたことがあるだけだ。自転車でいうと、まだ後輪に二つの補助輪が付いている状態だろう。補助輪が付いている自転車に乗っているにも拘らず、ツール・ド・フランスの出場者のような顔でペダルを漕いでいる者がいたとしたら、「こいつ補助輪付きのチャリンコに跨っといて、なにを恰好つけとんねん」と思われて当然である。誰かに用意された焚火を神妙な面持ちで見つめるというのは、それとほとんど同じように恥ずかしいことだ。
つまり、私が「焚火がしたい」という時、それは自分で必要な材料や道具を揃…
2023/3/7
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東京百景 (角川文庫) / 感想・レビュー
ホッパー
又吉さんの東京の様々な場所での追憶集。事実と妄想が混在していく文章もあって、そんなところもまた良かった。自分も東京に来てあの場所であんなことがあったな、と思い返したりもした。また読み直したい素敵な本でした。
2023/05/02
Vakira
言わずと知れた芸人で芥川賞作家の又吉さんが描く東京の百の風景とその場所にいた時の自分の生業を絡めた随想。人を笑わせたい。けど人が怖い。いいな~この絶妙なバランス。どこかで嗅いだこの匂い。誰だったか?もしや?そうだ、勝手に僕の印象ですが「人間失格」の葉蔵だ。いや津島修治?道化師と人間嫌悪と不器用な生辛さと純粋な性格、金欠時代、女性との関係はひもの様。して小説家。ほらほら、案外類似しているでしょう。現代の修治さんとちょっと東京散歩。風景と一緒に一瞬垣間見る又吉さんの妄想が面白い。僕の近隣町紹介がまた嬉しい
2022/05/12
ミライ
又吉直樹さんが2013年に発表した東京エッセイの文庫版、文庫化に伴いラストに一本(2020年の今を語った)エッセイが追加されている、表紙はのん(能年玲奈)さん。パート1~4まであり、1は下積み期、2からは綾部祐二さんとのお笑いコンビ・ピース結成後が中心のエッセイとなっている。エッセイは100本+αを収録されており、99本目のエッセイ「昔のノート」に言いたいことすべてが集約されている気がする。
2020/04/13
シフォン
芸人で芥川賞作家の又吉さんが東京に出てきてから32才までの自分の生活に付随した場所や場面について書いたエッセイ。最初に住んだ三鷹のアパートは太宰治の住居跡に建っていて、そこで太宰作品を貪るように読んでいたこと、雑司ヶ谷の夏目漱石の墓や田端の芥川龍之介の旧居跡のような文豪の話もあるが、多くは、アパート、公園、養成所、劇場での芸人仲間たちとの絡みや妄想、職質を受けたことなど。高校時代は文化祭や芸人仲間でリンダリンダを踊るときは、その輪に入れない。芸人になったこと、小説などを書いている原点が垣間見えた。
2020/08/30
きき
18歳で上京し、一通りの恥をかいて32歳になった又吉が見てきた東京の風景。街中に潜む奇怪な人物との遭遇や逆に自分が職質をかけられてしまう様は笑えたり。そんな表面上の面白さの下には、鬱々とした空気が漂う。それは不死身な自意識との戦い、周囲への疑問、社会で生きる残酷さ…それら絡み合って生まれたもの。だけどそんな日常の中に時折ぽっと嬉しい事、にやりとする事があるから生きていけるのであり、それを包み込む東京という街の不思議な包容力を感じる。これは又吉が見る東京の風景の記録であり、東京を通して見る又吉の人生の記録。
2020/04/16
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