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美しい日本の私 (講談社現代新書)

美しい日本の私 (講談社現代新書)

美しい日本の私 (講談社現代新書)

作家
川端康成
エドワード.G・サイデンステッカ-
出版社
講談社
発売日
1969-03-16
ISBN
9784061155800
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美しい日本の私 (講談社現代新書) / 感想・レビュー

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やすらぎ🍀

今宵の月を見上げれば、昨夜の月を思い出す。照らされている。日々の姿を変えて私たちと同じように。四季折々の美と共に喜び、花愛でることで我を知り、影遠くなり秋の音。静まれば雪が舞う。目を瞑れば夢に覚め、野辺水辺の息吹にまた我を知る。森羅万象、こころとは何処にあるのだろう。あらゆるものを見つめ、ここにはない山水を感じ入る。百輪の花よりも一輪の花を人は求め、蕾のほころびを待ちわびる。感情は雲のように流れ、また雲立ちのぼる。私たちは有明の空に今何を思う。この世に何を見いだす。陽光に月あかりを忘れてしまうことはない。

2022/08/28

nobi

K.イシグロ、O.パムクに次いでノーベル文学賞受賞講演録3冊目。先の二人と全然違う。これは最早スピーチではない、徒然なる想いを綴っていて耄碌の兆しもあるかも、と一読目は感じた位。ただ読み返す毎にその印象は払拭されて行く。美しさを支える勁さが三十頁足らずのうちに凝縮されている。連歌のように一首の感興に誘われて次首が生じ二首の拡がった世界からさらに次首が生まれるよう。平安から鎌倉そして“私”へと連なる文学の系譜、その華麗さと哀愁は、道元、明恵、西行等に見る死と戦乱に立ち向かう覚悟を伴って美しい日本を象徴する。

2019/03/16

アキ

冒頭に鎌倉時代の道元禅師と明恵上人の2首の歌を引いて、日本美術の特質を詩語「雪月花の時最も友を思う」に約められるとする。良寛の辞世の句に芥川龍之介の遺言にある「末期の眼」を見て、自殺について一休禅師のエピソードから禅宗の教えに至る。日本の美を確立した平安時代の和歌集・小説から美の伝統は続き、日本の象徴的な哀愁あるいは東洋の虚無は四季の美から禅に通じたものとしノーベル賞講演を終える。日本の美の真髄を語った。英語版「Japan, the Beautiful, and Myself.」サイデンステッカー訳も載る

2019/12/01

佐島楓

途中で芥川の末期の眼という言葉を引いているが、芥川の考え方、亡くなり方も日本的なるものと認めての引用だったのだろうか。川端自身は否定しているが、その後の川端の人生を思うとなにか考え込んでしまう。

2018/05/12

molysk

1968年のノーベル文学賞授賞記念講演。川端は美しい日本を、世界に語りかけた。「雪月花の時、最も友を思ふ。」四季折々の美に触れるとき、親しい友にこのよろこびを共にしたいと願う。自然と人間にたいする、あたたかく、深い、こまやかな、しみじみとした日本人の心である。「一輪の花は百輪の花よりも花やかさを思はせるのです。」わび・さびは、心の豊かさを蔵す。狭小、簡素の茶室は、無辺の広さと無限の優麗を宿す。物質としての無を、何物も真に存在しないと解する西洋と、無尽蔵の心の宇宙なのだと解する日本を、川端は対比させた。

2023/12/24

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