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現代小説のレッスン (講談社現代新書)

現代小説のレッスン (講談社現代新書)

現代小説のレッスン (講談社現代新書)

作家
石川忠司
出版社
講談社
発売日
2005-06-17
ISBN
9784061497917
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現代小説のレッスン (講談社現代新書) / 感想・レビュー

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harass

佐々木敦の批評講座のリストで出てきた本。日本の現代小説評論。話の筋を追うだけでは意味がつかめない小説の意図についての考察だ。日本語自体が「ペラい」(特に活字)ので、それを補うために内言、描写、思索を作品に取り入れるが作家たちはどういう工夫を凝らしているかと多数の成功例、失敗例を挙げる。著者の主観が強いところがあるがなかなか面白い。特に春樹を「ノワールもの」と捉えるなどは感心した。保坂和志作品の作風の解説なども面白い。手元に置いておきたい本だ。

2017/06/24

みなみ

村上春樹をはじめとして、純文学の「エンタイテイメント化」について解説する本。著作を抜粋しつつ紹介しているが、表現の「ペラさ」といった貶す表現も多く、少し残念な気持ちになりつつ読了。最近はまっている舞城王太郎の著作についても紹介されていたが、デビュー作(煙か土か食い物)について「内容レベルでの主人公の全能感と文体レベルでのドライブ感とが手を携えてまさに怒濤の勢いで展開していく」との評には納得。

2021/11/24

しゅん

物語るという行為には声や手振りといった多くの情報が伴うのに対し、活字で書かれる小説にはそうした豊かさが欠如しているため「描写」や「思弁的考察」など細部を拡大せざるを得ないが、細部を書き連ねることはどうしてもかったるさを呼び込みがちになる。そして、現代小説の作家は「かったるさ」を「エンターテイメント化」することで小説を新たな位相を開こうとしている、というのが本書の見立てであり、「描写」をエンタメ化する村上龍、「思弁的考察」をエンタメ化する保坂和志といった構図はかなり新鮮に響く。

2017/05/26

ヒダン

純文学の「エンタテイメント化」をキーワードに各作家の工夫を考察する。語り手のおはなしだったときは多くのしぐさによる情報があったが、活字ではむきだしのストーリーだけでは物足りない。そこで「内言」「思弁的考察」「描写」を取り入れるようになった。しかしそれらのおまけが増えすぎるとストーリーが滞ってしまう。それらは必要だがなるべく減らした方がいいという方向性をキーワードは表している。村上春樹がどういう小説家なのか説明してもらえたのがこの本の最大の収穫。深い理解には初期から順に作家読みすることが必要だと気付いた。

2016/07/24

NICK

社会学的批評、つまりメタ批評が最近の流行だが、この本は現代文学に「ベタ」に迫る文芸批評で、その意味で新鮮さを感じる。描写や思弁的考察を削り取り活字特有の「かったるさ」を消去する現代文学の「エンタテイメント化」をWムラカミや保坂和志などを題材に取り批判的に考察していく。様々な観点から論じているが、やはり個人的には日本語自体が孕む「ペラさ」についてが興味深い。一つの主張のために言葉を尽くすことが言葉そのものの意味をペラペラにしてしまう性質。それを自覚的だったのが阿部和重であり舞城王太郎だという。

2013/10/30

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