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新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)

新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)

新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)

作家
大江健三郎
鶴見俊輔
出版社
講談社
発売日
1986-06-09
ISBN
9784061837546
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ジャンル

新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

何度も回想が入るので時間軸は一様ではないが、イーヨーと呼ばれる大江氏の長男が19歳の時の物語である。障碍を持った彼との共生には物理的にも、またそれにも増して精神的にも、煩悶が付き纏い、同時にそれは常に死と生の問題を突きつけて来る。それだけに、作家にとっても、また私たち読者にとっても音楽劇『ガリヴァー』上演のシーンは、胸がつまるとともに暖かい共感と共生感に包まれる瞬間だ。小説の全編にブレイクの詩が流れるが、これはあくまでも個的で特殊な体験と、これもまた特殊な詩とが交錯することで普遍へと昇華させる希求だろう。

2014/01/03

Vakira

ケンちゃん アラフィフの頃、「雨の木」の後に書かれた短編集。「同時代ゲーム」「雨の木」の逸話が繋がって読者には嬉しい。形態は「雨の木」同様私小説だが、「事実とロマン」のロマンの部分が無い。Ken’sリアルマジックに毎度登場するありえないキャラ立ちストレンジマン(変態男)は登場しない。初めて真面目に書かれた小説に出合った。今回のストレンジマンの代役は今までヒーローキャラとして登場したイーヨーではない19歳となった脳に障害を持つ息子リアルイーヨー。そこには生と性と死の強烈なドラマがあった。現実は小説より奇なり

2019/04/06

ω

頭に重い障害を持って生まれた息子イーヨーのために、この世を定義すべく詩人ブレイクの詩を持ち出しながら書かれた私小説的短編集。イーヨーに対する世間の視線や暴挙、怒りで本を持つ手が震えた。大江は静かに美しい文体で、些か冗長的にさらさらと表現する。 苦しみに満ちた父子の共生、大きな体をしたイーヨーの無垢な明るさが救いである。最後に息子は二十歳になりイーヨーでなくなる。大江光さん。彼は大江健三郎のもとに、生まれるべくして生まれたのだ。 初期の小説とは異なり穏やかながら、文章のきめ細やかさは芸術で何度も鳥肌が立つ。

2019/05/12

メタボン

☆☆☆☆ 大学時代に読んだときは感動したが、今回30年ぶりに読み返してみると、これよりもレベルの高い大江作品はいくつもあるなと思い星は4つ。それでもイーヨーの太書きになったセリフにはクスリと笑わされたし、ブレイクの詩篇と響き合う文章はやはり素晴らしく、好きな作品であることは間違いない。

2021/07/09

KEI

ウィリアム ブレイクの詩から喚起される想いと、障害を持った息子 イーヨーとの生活を著してある。特にブレイクなどの引用や解説は難解だった。調べながら、何とか読んだ。相模原の事件に衝撃を受けているので、イーヨーの生まれた時の医師の言葉、その後の誘拐もどきの事件を著者がどの様に乗り越えていったのかに注目した。「イマジネーションは人の存在の実体である。」イーヨーはしっかり想像し、著者の支えとなり、要保護者では無く、幼児からの渾名イーヨーも不要となったのだ。続く

2016/09/07

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