蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫)
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー
ケイ
友人が「蜜のあはれ」の金魚が私みたいだから読んでみてと。似ていないと思うが…。詩を読みつけない私の知っている室生犀星は、「故郷は遠きにありて思うもの」と、芥川が“夜半の隅田川は何度みてもその言葉を越えることは出来ない”と讃嘆していた「羊羹のように流れている」の二行のみ。文章も書くのだと思った。詩人とは、作家よりも女性に対しての念のようなものが透き通っているように思っていたのだが、随分と違うようだ。「われはうたえどもやぶれかぶれ」ではまだ笑えた病状が、「老いたるえびのうた」ではどうしようもなくなっていた。
2016/02/16
メタボン
☆☆☆☆☆ とんでもない作品との出会いだった。金沢と言えば室生犀星、映画化されることだし、軽く読んでおくかと始めた読書だが、初めの「陶古の女人」からその濃密で美しい言葉の連なりにノックアウト。あとはむさぼるように読んだ。「蜜のあはれ」は会話だけで進む実験的な小説。主人公の金魚が何とも魅惑的。「火の魚」は蜜のあはれの装丁に使われた金魚の魚拓を巡る話で散文詩と言って良い美しさ。「われはうたえどもやぶれかふれ」は壮絶な病状記録で、自分の内面描写がすさまじい。奇しくも大晦日の読書が2015年のマイベストとなった。
2015/12/31
やいっち
二階堂奥歯著の死に至る日記『八本脚の蝶』にて、犀星の「蜜のあわれ」なる作品を知った。奥歯が言及するくらいなら、並の作品であるわけがない。変幻自在の金魚という幻想小説。晩年の犀星が理想とする若い女性像を、老作家と金魚との会話で描き出す。老いた作家を痒い所に手が届く…至れり尽くせりの世話を生活を共にしつつ彼女…金魚がしてくれる。時に我が侭で自己主張も強い、現代っ娘らしい少女像。老いた男の夢。小説だからこそ好き放題に描ける。そう、あと一歩で西牧徹の黒戯画の世界だ。
2021/11/24
佐島楓
表題作「蜜のあわれ」は幻想的な中にも少女の残酷性が透けて見える名作。「われはうたえどもやぶれかぶれ」は病床の記録でありながらどこかユーモアを感じさせる。それは著者が最後まで作家の視点を捨てなかった証だろう。
2019/08/11
ω
ずっと気になってた作品ω 「蜜のあわれ」は金魚がキャワイぃぃ〜!!ほぼ会話文で書かれてるのでスラスラ読めちゃう。他の作品は改行少なめ、行を追うのにうつらうつら……笑 多作の売れっ子作家さんだったらしい。室生犀星超晩年の5篇。遺作詩「老いたるえびのうた」は趣深い…。素晴らしい文学作品。
2021/09/11
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