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終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

作家
安部公房
真能ねり
リービ英雄
出版社
講談社
発売日
1994-12-27
ISBN
9784061963054
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ジャンル

終りし道の標べに (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

安部公房の処女作。最初の出版は1947年。著者自身の言によれば「きわめて非小説的なもの」。いたって難解である。ページ数の割には読了するまでに随分時間を要した。3つのノートと追録という構成をとる。プロットは一応は一貫性を持ってはいるものの、登場人物の関係性等は霧に包まれたままである。さらには阿片の薫香が主人公に、そして同時に読者に混迷を与えるかのようである。物語の舞台は中国の北東部であり、安部公房の自伝的な意味合いもあるのかとは思うが、ここで回想されようとしているのが何なのか、それも不明のままであった。

2022/04/10

ころこ

「私」がどこにいるか分からない方向感覚の無さに気付きます。ただ「李」とか「陳」とか他者の固有名が登場しますが、それは方向感覚を麻痺させるだけで、「私」が一体どこにいて、どこに向かっているかの手掛かりにはなりません。ここは作者の故郷である満州がモデルですが、故郷がアイデンティティ喪失の装置として働いています。作者は故郷を旅の終わりに喩え、そこから行き先の無い旅がはじまります。引揚者ということは、そういうことだと後に知りました。日本社会のタガから外れてしまった人物を描いた数々の作品は、この原風景に見出せます。

2019/04/06

たぬ

☆2.5 ぐうう理解が追い付かねえ。舞台は中国で主人公は阿片中毒ってことくらいしか。半分まで読んだけど以降は投げ出しました。ごめん。処女作らしいです。20代前半でこういうの書いちゃうんだなあ。

2021/11/07

かふ

安部公房はこの作品を書いている時はリルケ『時禱集』を読んでいたという。リルケの詩に伺える絶望の闇の世界から書くことについて、それはドストエフスキーやカフカの文学にも通じていくことだろう。安部公房は満州に渡って五族協和の夢を信じていたのだそうだ。むしろそれが敗戦とともに瓦解していくなかで、親友である金山時夫(在日朝鮮人のような)の寄る辺のなさ、故郷喪失者としての生き方を重ねていたのではないか?金山時夫は、私(T.........)である。

2022/06/30

長谷川透

安部公房の処女作。満州を舞台にした小説で、“五族協和”を掲げて建国させたという靖国神社を始め日本の右翼の主張があながち誇張、理想化された歴史ではないことがわかり、貴重な史料としても読める。小説として読むのは難しく、小説よりも一種の思想書として読むよういしてからは幾分肩の力も抜けた。生まれた日本の地を去り、満州という新しき国に第二の人生を求めて向かい、戦後引き揚げてきた者たちの精神は非常に興味がある。この小説も乱暴な言い方をしてしまえば自分探しの文学だが、その類の中ではこれまで読んできた中で最も難解だった。

2013/05/04

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