能の物語 (講談社文芸文庫)
能の物語 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー
buchipanda3
能楽の著名な演目を「物語」として描いた作品集。能の謡曲(台本)を現代小説風にアレンジしており読み易い。出典は平家物語や伊勢物語などで、聞いたことがあるのも話に入り込み易かった理由の一つ。何よりその霊妙幽玄な世界が好みのものだった。話の主役(シテ)は亡霊や神などこの世にあらざる者が多く、ある事情でこの世に残した情念から救いを求める。その哀しき姿、苦しみ悶える姿の昂ぶりの描写が否応なく舞うが如きに感じられた。無常の空しさ、戻らぬ儚さ、それを昇華させる舞、この世は夢なのか。能楽の世界をもっと知りたいと思った。
2023/01/04
フリージア
一度も"能"を観たことがないが白洲正子氏の「謡曲平家物語」を読んで、興味を持った。お能の主人公はおおむね幽霊、もしくは精とか狂人とか別の次元で生きている人たちで、痛切に訴えたいものを心に秘めており、彼らはこの世に現れて自分の思いを打ち明け、打ち明ける事によって救いを求めているのだという。二十一の謡曲を物語りに「翻訳」し、読みやすいものになっている。筋もそして舞台で醸し出されるのであろう情景も美しい文章で表現されていた。話は全て日没からで、月明かりの中で話される。昔は夜が身近だったのだろうか。
2021/05/10
なお
能の名作21篇の謡曲と言われる台本を、白洲正子が現代語に意訳した物語集。独特の「間」や「幽玄な雰囲気」を持ちつつ、背景となる出来事が物語の中で分かり易く語られ、能に親しんでいなくても『能の物語』の世界に浸り楽しめる。その中でも『平家物語』を題材にとった「実盛」「俊寛」「敦盛」等の11篇がある。主人公(シテ)の霊はこの世に残した悔いや恨みを語り、その魂は鎮められていく。『平家物語』が鎮魂の物語である所以だと思った。他に「安宅」「道成寺」等。以前観た篝火の中での薪能は、異空間に入り込んだ様で忘れられない。
2023/03/31
九鳥
題の通り、能の筋を紹介した物語集で、これを書く人は白洲正子の他にいない、というような本。知っている話、歌舞伎で見た話もちらほら。立て続けに筋を追うと、能という芸能はフォーマットがほぼ一様であるのが分かる。著者の言う通り、これを読んで分かった気にならず実際の舞台に足を運ばないと、本当の魅力は味わえないのだろうな。けどこれはこれで舞台にはない情景描写などもあって楽しかった。「熊野」「舟弁慶」「二人静」あたりが見てみたい。
2009/06/02
3月うさぎᕱ⑅ᕱ゛
何度か薪能に足を運んだことがあるけど、お能は囃子と地謡と能舞台の雰囲気がとても好きで、心地よく聴きながらだいたい寝ていた。白洲正子さんが語る能の物語は、情景描写や文章がとても美しく、目の前に能の物語が幽玄さを持ってゆったりと流れるように広がっていく。お能の主人公は成仏できない霊が多いとは聞いていたが、源氏物語や伊勢物語、平家物語などと通じ、和歌の伝統の元に謡曲が作られていることを知る。青葉の笛も出てきて神楽を思い出す。この心持ちでお能を観にいきたい。途中でまた寝てしまうかもしれないけど。
2020/09/13
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511