西国巡礼 (講談社文芸文庫)
西国巡礼 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー
Gotoran
白洲正子こと、韋駄天お正の西国三十三ヵ所巡りの記録。全て自らの足で巡り、観音信仰の広大無辺、自然の中での精神の躍動を、自己の存在を賭けた言葉で語られていく。一つの寺に割かれている語りは本の数頁で、またその思い入れも、寺毎によってかなり異なっている。寺自体への描写は限定的で、むしろそこ辿り着く道程が著者独特の筆致で描かれている。全体的に、非常にわかり易く、読み易いエッセイとなっている。著者の比較的初期の作品を愉しんでみた。
2023/07/15
メタボン
☆☆☆☆☆ 寺、仏像、能、和歌、道行き。白洲正子の真骨頂と言える西国巡礼記。里山にひっそりと佇む寺院の空気感が伝わってくるし、時代を超越したその佇まいも感じられる。さすがに全行程徒歩というわけに行かず、途中まで車を利用はするが、それでも最後の道行きは自力で歩き、往時の巡礼を偲ぶ。深い教養がにじみ出てくるような名文に、コロナ禍の中、時空を巡る妄想巡礼を堪能した。名著。
2021/08/21
Pー
西国三十三霊場の巡礼、当時の納経帖を取り出してみると平成17年から18年にかけて参拝していたようだ。読んでいて当時の記憶がとぎれとぎれに思い出すことが出来懐かしさでいっぱいの愉しい読書だった。白洲さんは初読みだけど独特の作風を持たれた作家さんだな、と新たな興味が沸き他の作品も是非手にしてみたい。解説を読んで『道行き』という作風の意味と魅力が朧げに理解できたことが大きな収穫だった。確かにこの作品でもそれぞれのお寺の解説的な内容はほとんど触れられていなかった。お寺にたどり着くまでの『道行き』の表現に惹かれた。
2018/12/06
モリータ
◆西国三十三箇所の巡礼記。番外も含め3/4ほど回ったところ(滋賀の3か寺を回る最中)で読んだ。◆車で行くことが多く、順番も気にしていなかったのだが、紀州から河内(紀三井寺→施福寺→葛井寺)、宇治から滋賀(三室戸→醍醐→岩間寺)などの道行きが実感できないのは惜しいと思う。著者が眺めがすばらしかったという播州清水や善峯など、気分や天気のために眺望が印象に残らなかったところもあるし、また巡ることになると思う。◆といっても快晴に堂宇を楽しんだところも多い。弟と初夏に行った岡寺、父と小春日和の散歩をした醍醐寺など。
2018/05/05
Kajitt22
『巡礼は、長い間、私のあこがれであった』、と始まる京都を中心とした三十三の観音様をまつった霊場への巡礼記。一番、那智の滝への感動が初々しい。著者五十代半ばの作品だが、地名の由来や字面からの想像など、古に思いをはせる文章は何物からも自由で、若々しい。十八番、京都の中心にある六角堂では、お参りする人々を見て、『何にともなく、ただ手を合わせて拝んでゆく、それでいいのだ、それが日本の信仰だ』、と記している。歌や能の素養があれば、もっと楽しめるかもしれない。
2015/08/29
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511