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ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)

ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)

ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)

作家
多和田葉子
室井 光広
出版社
講談社
発売日
2005-04-09
ISBN
9784061984028
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ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー

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KAZOO

かなり初期の頃の作品集(3つの短編)で私は比較的好きな短編がありました。表題作は私も何度か通ったこともあり懐かしい場面などがありました。「隅田川の皴男」も好みで印象に残ります。多和田さんは私のフィーリングに会う作家だと感じています。

2018/02/25

mm

感覚でいうと、私の体の中とか記憶の中に勝手に入ってきてグニュグニュとかき回して、いつのまにかまた外へ逃げて行く文章。感覚的には空き巣より始末が悪い。解説によれば、これら作品の主人公たちの役割は、物狂い的・巫女的なもので、漂泊し越境するらしいのだ。私の感覚的反応も起きるべくして起きたということか。。本人が書いているのですが、ゴットハルト鉄道は最初ドイツ語で書いて、日本語に翻訳したら違った作品になってしまったそう。翻訳というトンネルを抜けると違う景色に出会うなんて体験してみたいなぁ。方言と共通語間でも可能か?

2018/06/12

ネムル

字を読むという行為に対して、これほど愉悦を覚える作家はそうはいない。ゴットは神、ハルトは硬い、国境の鉄道に入り、アルファベットの「O」の口に潜り込み、間という場所で言葉がぐずぐずと変容、自壊し続ける。石や肉体に例えられるように、無機質とも有機物ともいえない不思議な言語感覚だ。「硬い石がゲッと擦れ合い、砂利がシッと滑り落ちて、谷底に湿ってネンの粘土に変化した」町のゲッシェネンというおバカで無邪気な表現すら、多和田作品では最高の魅力の一つ。

2009/07/28

ぱなま(さなぎ)

トンネルに入って行くように、薄暗い一階に降りていくように、橋を渡っていくように、自分の身体に手を差し入れてみるように、自身の内部にあるものを探ってみる好奇心。『無精卵』はナチの迫害やアンネ・フランクの日記が後世に残された経緯を彷彿とさせるが、男女が共生する中で男が息を詰まらせ女が抑圧される物語のようにも思う。居心地が良いとは言えないが読まずにはいられない快感のようなものがある。

2018/08/26

翠埜もぐら

ゴットハルトと言う珍しく実在する地名を旅する表題作。主人公の女性に実在感があってこれまた珍しいものだと思っていましたが、やっぱり紀行文などではなく、潜り込んで行くのはトンネルなのか、潜り込んで裏返っていくよう感覚でした。多和田さん描く主人公の女性たちは一応にアイデンティティが薄く、薄い膜につつまれてふよふよしている水のような印象があるのですが、他者とかかわることに対しては非常に硬質になったり、ジワリと何かがにじみ出たり、薄いアイデンティティで相対する男を圧倒したりするのです。→

2022/05/31

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