未明の闘争
未明の闘争 / 感想・レビュー
踊る猫
保坂ワールドは一作ごとに確実に進化/深化している。悪く言えばコアの部分はワンパターンでもある。女性をややエッチな視点から描き、野郎たちのバカさ加減を書き、猫を書き風景を描写する。その筆致は綿密を極めるが決して読みにくいわけではない。読みやすく、ややもすれば退屈さしか感じさせない部分を豊満な情報量を盛り込んだ文体で描き切り読ませる。今回の鑑賞で、やっぱり保坂の世界とフェミニズムは相容れないのではないか、と思った。助平さというかしみったれた欲望があからさまになるあたり、男性の私から読んでも馴染めないままである
2022/03/21
Bartleby
読むのにとても時間がかかった。どこに行く時も持って行ってちびちび読み続けていた。途中退屈に感じることもあったけれど終わりのところではこのままいつまでも続いてほしいと思っていた。読んでいないときにもふと、本の中の人物や猫たち、あるいは彼らの言葉を思い出すことがあって、そうしたひとつひとつが自分にとっても懐かしい、大切な思い出のように感じられた。
2013/12/08
Meme
始点から大きな円を描き始め、始点と終点がピッタリと合わさった感覚を最後の一段落で味わいました。人も猫も日常風景が中心です。時間軸も視点も行ったり来たり。柳春の霊魂あたりの話が分からなくて最高に面白かったです。短編映画として見たいですね、これは。
2023/05/26
つーさま
どうもこの作品は普通の小説とは違う。冒頭からしてそうだ。<私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。>所々にこうした主従関係のおかしい文章が見られる。変なのはそれだけではない。ある時間の流れに異なる時間が何の前触れもなく注ぎ込まれ、しかも足跡だけ残して突然表舞台から消え去ってしまう。そのせいか分からないが、小説を読んでいるというよりかは立ち現れる場面場面に偶然居合わせてしまったような感覚がした。しかし、そんなただの通行人にも、うまく言葉にできない感情が不意に込み上げてくる瞬間が何度もあった。
2013/10/12
フリウリ
いくつかのエピソードを細分化して、無作為に並び替えたような構成で、それらに意図があるように、ないようにみせているのですが、その構成自体が作為的(考え過ぎ)に感じられ、果てしない反復に付き合うのは、しんどかったです。自己言及的、タコツボ的な小説は好きですが、バットを振るなら振り切ってもらったほうが、付き合いがいがあると思いました。3
2024/01/19
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