銀河鉄道の父
「銀河鉄道の父」のおすすめレビュー
子育てに悩んだら読んでほしい——親子の葛藤を描いた直木賞受賞作『銀河鉄道の父』
『銀河鉄道の父』(門井慶喜/講談社)
親というものは自らの子を甘やかさずにはいられないものなのか。たとえ親の威厳を保とうと平静を装うとも、子の一挙手一投足に心揺り動かされてしまうものなのか。第158回直木賞受賞作・門井慶喜氏著『銀河鉄道の父』(講談社)は、『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』などの著作で知られる文豪・宮沢賢治の父親の姿を描き出した作品。
現代人からすると、宮沢賢治には聖人君子のようなイメージがつきまとうが、親から見れば、彼は決して出来の良い息子ではなかった。しかし、どんな「ダメ息子」であろうと、親は子を愛さずにはいられない。息子に振り回されながらも無償の愛を注ぎ続ける父親と、その愛情に甘えながらも、父親を超えたいと葛藤する息子。不器用な親子の姿を描き出した傑作小説である。
宮沢賢治は、明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた。生家は祖父の代から富裕な質屋。賢治の父・政次郎は、家を継ぐ立場である賢治に惜しみない愛情を注ぐ。賢治が赤痢にかかればつきっきりで看病し、「質屋に学問はいらない」はずなのに、賢治の望み通り、盛岡中学への進…
2018/2/10
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銀河鉄道の父 / 感想・レビュー
starbro
門井慶喜は、新作中心に読んでいる作家です。宮澤賢治は知っていますが、宮澤賢治の家族の物語は初めてとなります。私は勝手に宮澤賢治は岩手の貧農の出身だと思っていたのですが、実は金持ちのボンボンでした。寛容な父親や家族のお蔭で素晴らしい作品が生み出せたんですね。雨ニモマケズ・・・
2017/10/27
鉄之助
やっと読めた。期待以上の大満足。父・政次郎から見た賢治の新しい一面を堪能した。賢治と言えば、堅物の求道者などといったイメージでとらえがちだったが、「まじめだが、沈鬱ではない、遊び心やいたずら精神に溢れた」面を描いている。時には、作品のために妹・トシの「遺言を捏造」したり、自らの死に様を演出したり、実に人間味に富んだ人物像が浮かび上がった。賢治をグッと身近に感じられる1冊だ。→ 続く
2019/01/13
ウッディ
父の視点で描いた宮沢賢治の家族の物語。旧家の長として威厳を保ちながらも、時にダダ漏れになる賢治への愛情は、大人と上手く話ができない失格社会人でありながら、多くの子供たちに夢と正義を伝えた童話作家宮沢賢治を生み出したような気がします。賢治って貧しい農家の生まれだと思っていたら、裕福な質屋の生まれだったんですね。我が子を温かく見守る良いパパだから、飴と鞭の使い分けに悩み、息子のふがいなさを嘆きながらも、賢治の童話が新聞に掲載された時に溢れ出す喜び、そんな人間臭さが丁寧に描かれていたように思い、面白かったです。
2019/05/20
抹茶モナカ
宮沢賢治の父・政次郎を主人公にして、賢治の生涯を綴った小説。個人的に大学の卒論で宮沢賢治作品を扱ったので、その頃に読みたかったな、と思った。脚色もあるだろうけれど、大筋で賢治の人生が掴める。父性がテーマなのもあり、自分の父親の事を考えてしまった。父親の思いというのは、多分、この小説に描かれているようなものなのだろう。文体も軽妙で、テンポが良く、読みやすい。
2018/01/24
どんふぁん
2018年3月4日読了。宮沢賢治さんのお父さんの話だけど、宮沢賢治をはじめ家族やその周りの人のことの一生を書いてあります。宮沢賢治という人を知った気がします。こんな変わり者の人やったんですねぇ。そして政次郎さんもなかなかお堅い人で。でも愛あふれる感じで、素敵な家族や思いました。で?賢治とトシの病名は結局?結核だったのかな?
2018/03/04
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