女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。
「女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。」のおすすめレビュー
「女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。」直木賞作家が描く、俗と笑いに満ちた恋愛喜劇集
『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』(東山彰良/講談社)
頭の中で悶々と異性を意識した経験があるかと問われれば、誰もがそれぞれに、(例えば青春という言葉と結び付けながら)胸中にしまい込んだ初々しい「あの頃」のエピソードを思い出すはずだ。東山彰良氏の『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』(講談社)で楽しめる6つの短編には、そんな「あの頃」がユーモラスな筆致で詰め込まれ、むき出しにされている。力みが取れるような、なんともみっともないタイトルであるが、軽佻浮薄そのものの登場人物たちが、持て余したリビドーを異性に向けては翻弄されるという、タイトル負けのしない内容のみっともなさには毒気を抜かれること請け合いだ。
東山氏といえば、第153回直木賞に輝いた『流』(講談社)では、史実に肉薄する戦争描写から大胆なほどの俗っぽさまで、作家としての多芸さを存分に披露してくれた。今作に関しては、こと軽妙さという点において彼の引き出しは大きく開放されている。
各話は福岡の大学に通う、女性にからっきし縁のない〈有象くん〉と〈無象くん〉を中…
2017/12/17
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女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。 / 感想・レビュー
starbro
東山彰良は、新作中心に読んでいる作家です。まずは著者がこんなタイトル・内容の作品も書くのだというのが驚きでした。青春ユーモア連作短編集といった趣です。舞台は福岡の西南学院大学でしょうか?オススメは『温厚と激情』と『女王陛下のダンベル』です。会話が博多弁なのも好かとぉ!
2017/12/07
しんたろー
東山彰良さん初読み。読友さんの「笑える!」という激オシに従って…なるほど!これは笑えたし、自分の高~大学時代の再現フィルムでも観ているかのようだった。題名も人物のネーミングもスッと頭に入ってくるし、女子の強かさと男子のおバカさは「今も昔も変わらない」と微笑ましい。博多弁が世界観とマッチしていたし、案外と深いことを織り交ぜているのも面白かった。30ページ程の簡潔な話がエッセイ感覚で読めるので、息抜きにピッタリな一冊。それにしても、女王ちゃんやビッチちゃんみたいな子に、散々振り回されたなぁ(笑)。
2018/03/26
なゆ
東山さん初読み。もうちょいお堅いイメージだったので、驚きつつも楽しかった!タイトルもやわいしね。福岡の大学に通う、冴えない男子のキャンパスライフ、って感じ?有象くんと無象くんのまわりで、イケメンくん、温厚教授、小悪魔ちゃん、ダンベル先輩、ビッチちゃん、抜け目なっちゃんなどなど、名は姿を表す面々が騒ぎを起こす。色恋がらみやモテたい願望におたおたしながらも、互いにライバル心もちつつ仲良しの有象くん無象くんが良い味でてる。女の子たちの逞しさに比べて、男子がんばらんかい負けとうやん!何より嬉しい博多弁てんこもり♪
2018/08/08
あも
違うっつぉ。男はそいだけで一年どころか一生が経ちよーもんばい。そうっちゃんね?ちかっぱ楽しか小説やった。イケメンくん、本命ちゃん、ビッチちゃん等々記号化された大学生たち。彼女欲しか、お金も欲しか、ばってん俺らーはイケメンくんでもリーダー君でもないっちゃけん。主役やなくて所詮脇役くさ。そんな有象君と無象君はイケメンらの恋の顛末を聞いては心を乱し、学内ギャンブルでクロムハーツを買おうと画策。よかやん、楽しそうやん。博多弁で送るその他大勢有象無象の学生生活にまるで彼らの仲間になりよーごたる楽しか時間やったつぇ。
2019/08/14
ずっきん
期待値ガン上げで読み出したけど、いきなり超えてくるよね。しかも、おもっきし斜め上からね。一行たりとも読み流せない豊潤な文章で構築される、壮大なくだらなさ。最高かよ。もう、笑える笑える。アナクロ臭にときおり戸惑うけど、筆致と展開がしれっとそれを飲み込んでく。なんつっても神視点をさらっと読ませてしまう筆力だもん。常々、芥川龍之介が現代作を書いてくれたらなあ、なんて叶わぬ夢を見ていたけれど、もう大丈夫。東山さんがいるから。ところで、他の作品でも出てきたけど『パンティ』は作家としてのこだわりなのか。男の夢なのか。
2021/05/24
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