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水中翼船炎上中

水中翼船炎上中

水中翼船炎上中

作家
穂村弘
出版社
講談社
発売日
2018-05-23
ISBN
9784062210560
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「水中翼船炎上中」のおすすめレビュー

人気歌人・穂村弘が感じた「昭和」そして「現在」――17年ぶりの歌集『水中翼船炎上中』

夜ごとに語り続けた未来とは今と思えばふわふわとする

 大人になって、私たちは途方に暮れる。ここは一体どこなのだろう。まるで知らない星にひとりぼっちで降り立ったような心もとない気持ちにさせられるのは、自分をこの世に産んだ人たちが、ひとり、またひとりといなくなるせいだ。母よ。そして父よ。子ども時代に当たり前にあった風景も、蜃気楼のように遠ざかり、やがて跡形もなく消えてしまう。いずれ自分もここから消え去ることがリアルに実感できた時、通り過ぎてきた景色がまったく別の輝きで、きらきらと降ってくる。

 穂村弘の17年ぶりの最新歌集『水中翼船炎上中』(講談社)は一見ノスタルジーにみえながら、穂村弘ならではの試みと批評性が込められている。誰かの子どもだった時代の終わり。ひとつの時代の終わり。昭和38年(1962)生まれのこの歌人にとって元号が平成からまた変わろうとしている今こそ、失われようとするものを言葉にして刻みつけておかねばならない時なのに違いない。陸海空を自由に移動できる「水中翼船」は昭和の子どもが見た夢だった。

 歌集は、こんな一首で幕を開ける。

お天気の日は…

2018/6/15

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水中翼船炎上中 / 感想・レビュー

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風眠

「あぁ・・そうだったな、そうだったよ」って、ずっと昔の日常に、ひとときタイムスリップするみたいな感覚になる。三十一文字という限定された形の中で私は、小さい頃の茶の間へ行ったり、中学生の頃の教室へ行ったり、はじめての一人暮らしの部屋へ行ったりしてきた。味の素を混ぜた醤油の海苔おにぎり、美味しいんだよね。そう言えば子どもの頃のトマトは今みたいに甘くなくて、砂糖かけて食べてたな。おばあちゃん家の麦茶はコーヒーみたいに真っ黒で砂糖が入ってたけど、美味しくなかったな。お尻にセロファン貼る検査あったな、今はどうかな?

2018/06/30

美登利

良かった。短歌は未だにどう詠んだらいいのだろう?という思いがあって(格好つけてしまう気がして)詠めないんです。歌集であるある!と感じたものは初めてかもしれない。穂村さんと同年代であることも一因だけれど、どちらかというと女子よりな目線だよなといつも思っています。一回読んで意味が分からない歌は2回目読むとすんなりと心に落ちてくるから不思議。幼い頃の何でも「味の素」信仰、今じゃほとんど使わないのにそんな時代だったなととても懐かしい。

2018/07/26

コットン

装幀が良い感じ!これも名久井さんだった。中にメモがあり表紙のデザインは構成要素が微妙に異なる3×3=9パターンあるそうで、流石です。オチャメなほむほむの歌も良い。「宇宙船のマザーコンピュータは告げるごきぶりホイホイの最適配置」 「応答せよ、シラタキ、シラタキ応答せよ、お鍋の底のお箸ぐるぐる」

2020/08/11

♪みどりpiyopiyo♪

ふはー♡ おもしろかった☆ 世界音痴なみんなのアイドル(?)、当代きっての人気歌人、ほむほむ こと 穂村弘の、実に17年ぶりの個人歌集です。■これまでの歌集と比べて、題材も言葉選びも より日常の一コマをすくい取った様で、穂村さん自身が出ている様に感じました。■幼き夏の日の情景、冬の夜の夢想、これ、大人になった今 思い出して書いたのかな? それとも日記とか取ってあったのかな? 少年期、思春期、青年期、パラサイト期、そして現在まで。ほむほむの人生を辿るような1冊でした (ღ′◡‵) (2018年)(→続

2018/07/10

tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。

☆5.0  ほむほむの詠む歌が熱伝導のように 熱力学の第二法則により ぼくのなにかを撹拌する。 あまりのあたたかさに ぼくは悲鳴をあげ ぼくは体をくねらせ 抗うことは無論できずに ただその心地よさに身を委ねるのさ。

2020/07/08

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