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将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

作家
大崎善生
出版社
講談社
発売日
2003-05-15
ISBN
9784062737388
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「将棋の子 (講談社文庫)」のおすすめレビュー

プロ棋士になれなかった若者たち…『聖の青春』作者が描く元奨励会員のその後の人生とは

『将棋の子』(大崎善生/講談社)

 将棋界の最年少記録を次々と更新している藤井聡太二冠。彼の華々しい活躍は多くの人の注目を集めている。だが、勝者がいれば、必ず敗者もいる。藤井聡太二冠のような天才棋士がいる一方で、プロ棋士を目指しながらも夢やぶれて将棋界を去っていく者もいるに違いない。

 大崎善生著『将棋の子』(講談社)は、プロ棋士になれなかった青年たちの苦闘の日々と、その後の人生を描き出したノンフィクション作品。大崎善生氏といえば、雑誌『将棋世界』の元編集長であり、29歳で亡くなった棋士・村山聖の生涯を綴った『聖の青春』でも知られる作家だ。『将棋の子』は、将棋界を長く取材し続け、多くの棋士たちと信頼関係を築き上げてきた大崎氏だからこそ描けた作品といえるだろう。将棋界を去ることになった青年たち。その挫折の先に待ちかまえている非情な生活に、大崎氏は優しい眼差しを向ける。

 この物語の中心として描かれるのは、大崎氏の同郷、札幌出身の成田英二。彼は母とともに上京し、日本将棋連盟のプロ棋士養成機関・奨励会の会員となった。そこは、全国各地から将棋の“神童”たちが集…

2020/10/15

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健康なときにどんな生きかたをしていたのかがあぶり出される。命をかけた往復書簡『急に具合が悪くなる』(宮野真生子、磯野真穂/晶文社) 『急に具合が悪くなる』(宮野真生子、磯野真穂/晶文社) 「生きている意味なんてない」とメイプル超合金のカズレーザーさんがYouTubeで発言していた。ふと、あの時もう1つの選択肢を選んでいたら今頃どんな人生だったのだろうと思う瞬間がある。過去の選択が良かったかどうかなんて結果論でしかないのだが、自分の選択に意味を持たせ納得しながら人生を歩んできた身としては、その考え方いいなと思った。

『急に具合が悪くなる』は、がんを患い余命僅かと宣告された哲学者・宮野真生子さんと人類学者・磯野真穂さんが「死と生」「別れと出会い」「偶然と必然」等を巡ってお互いの学問と人生を賭けてぶつけ合った20通の往復書簡だ。読者は徐々に宮野さんと死との距…

2020/10/30

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将棋の子 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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遥かなる想い

この物語は将棋に人生を かけた奨励会の子供たちの 夢と挫折の物語である。 「成田英二」という将棋の子を追った物語… 読んでいてひどく胸が 切なくなるのはなぜなのだろう。 地元では天才と言われた 子供たちが味わう挫折と 苦闘の物語。 「人間の宿命の残酷さ」を この本は無惨にも 切り取り、読者に示す。 羽生などの昭和57年組の 凄まじさと、夢を断たざるを得なくなった人々… 波瀾万丈なその後の人生を 送る、かつての天才たちの 心に潜む将棋への想い… ひたむきゆえに何故か心に痛い、 そんな物語だった。

2015/01/12

yoshida

【birthday book】イベントで読了。全国から集まる将棋の神童。彼らがプロ棋士を目指し、しのぎを削る奨励会。彼らは地元では神童でも、奨励会では平凡だと知る。北海道から家族で上京した成田を軸に話は進む。奨励会で彼らは26歳迄に勝ち抜けねばならない。刻一刻と迫る時間。軽々と勝ち抜ける羽生らの天才棋士。将棋を中心に高校も出ず生きてきた彼らは焦る。誘惑に逃げる者、将棋から逃げる者、屈せず立ち向かう者などそれぞれ。成田と母のやり取りに、涙した。どん底まで落ちた成田に救いのあるラスト。人生捨てたものではない。

2015/12/20

ちょこまーぶる

様々な箇所で感動に出会えて電車・バスの中で涙を堪えるのが大変だった一冊でした。数年前に「聖の青春」を読んで、村山聖棋士の人生を知り打ちのめされて、今回は他の奨励会の若者たちの夢破れる人生を彼らに寄り添って作品にされてました。棋士の世界では華々しいプロとして活躍できるのは、ほんの数名だという事はわかってはいたが、子供の頃から学業よりも将棋を優先した生活を送り続けている若者の挫折後生活の過酷な中でも、彼らは将棋を完全に捨てることなく生きていく姿に再び感動を覚えました。まさに将棋の子というタイトル通りでした。

2016/02/27

はっせー

あるブックカフェで売っていた本。何気なく買ったが本当に読めて良かった!奨励会。将棋のプロを目指す若き棋士が所属する。4段になるとプロとして名乗れる。しかし奨励会には年齢制限がある。そのため多くの棋士が夢破れて奨励会を去っていく。その夢破れていった若者にフォーカスを当てた作品がこの本である。高校も出ていない。社会経験もない。遊びも知らない。将棋一本で頑張ってきた人がこれからどんな道を進んだのか。そしてどんなドラマがあったのか。読めば読むほど辛くもなるがこれが現実である。勝負の厳しさと将棋の優しさを感じる!

2021/12/29

kazi

将棋と棋士の話が大好きな自分。久々に読み返したくなり再読しました。プロ棋士の卵である奨励会員たちの闘いの日々。そして夢破れて去っていった元奨励会員たちの第二の人生を追ったドキュメンタリー。これは本当に長らく将棋世界編集長として総本山・千駄ヶ谷の中心で将棋界を見てきた大崎善生先生にしか書けない作品ですね。また大崎先生以外にこの作品を「書く資格がある」作家がいるとは思えないです。毎年毎年、プロを志した無数の天才少年たちが、奨励会の門をたたく。その門を潜り抜けてプロになれるのは1年間にたったの4人。

2020/10/01

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