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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

作家
辻村深月
出版社
講談社
発売日
2010-01-15
ISBN
9784062765572
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「スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)」のおすすめレビュー

『ハケンアニメ』の辻村深月が描く、クリエイターたちの苦悩と熱情『スロウハイツの神様』

『スロウハイツの神様』(辻村深月/講談社、上下巻)

 突然の私見になるが、私は辻村深月さんの作品が大好きだ。彼女が書く登場人物たちの感情は、どうにもならなくて心の奥に抱えていた苦しさや悲しさを思い出させ、そっと包んでくれる。とある作品の主人公の心情描写には、私が誰にも言わず、心の中で思っていたことを言い当てられたようでどきりとした。初めて彼女の作品を読んでからすぐに既刊を買い漁り、明日の予定も省みず深夜まで夢中で読み進めた。

 そんな読書体験は、読書好きならばみな、作家は違えど経験したことがあるはず。そしてその感情は『スロウハイツの神様』(辻村深月/講談社、上下巻)の主人公・赤羽環が敬愛する作家・チヨダ・コーキに向けるものと全く同じだ。本作の舞台はクリエイターやその卵たちが集う家・スロウハイツ。映画監督志望、漫画家志望などさまざまな夢を持つ5人が集まるこの家の持ち主が、すでにデビュー済みの脚本家・赤羽環だ。極度の負けず嫌いで人にも自分にも厳しい彼女が友人たちと住むこの家を、手塚治虫と当時まだ無名だった赤塚不二夫などが住んでいたトキワ荘になぞらえる…

2022/9/24

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村上春樹にミヒャエル・エンデ…物語とチョコレートの“いい関係”にひたれるおすすめ本

 古今東西、物語に描かれたチョコレートを見てみると、人とチョコのただならぬ関係が見えてくる? 『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』『芥川賞ぜんぶ読む』などの著作が話題の小説読み・菊池良さんに、チョコレートが登場する小説を教えてもらいました。

『ねむり』村上春樹

『ねむり』(村上春樹/新潮社)

 突然眠れなくなった「私」はその時間を埋めるように読書へ没頭する。彼女の身体に起きている変化とは? 元は『TVピープル』に収録された短編がバージョンアップ。カット・メンシックによる美しいイラストも見どころ。

ブランディーとチョコレートで読書を

 村上春樹の『ねむり』は「眠れなくなって十七日めになる」という印象的な書き出しではじまる。  歯科医の男と結婚して子どももいる「私」はある日突然、眠れなくなった。病院には行っていないが、それは不眠症ではないと「私」は感じている。それは「眠りにくい」のではない。彼女はほんとうに一睡もできなくなってしまうのだ。彼女の重大な変化に、家族は誰も気づいていない。 「私」は夜になるとベッドを抜け出して、ソファーに座り一人で『ア…

2020/2/13

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観た後に悲しみではなく幸せの涙を流せるのが“キャラメルボックス”の舞台 辻村深月×成井豊対談【後編】

■原作の“外側”も描き出す舞台版『スロウハイツの神様』

辻村深月(以下、辻村) 『スロウハイツの神様』の脚本も、成井さんからは事前に「環と公輝の物語に絞っていいですか」と聞かれていたのですが、第一稿を読んで、「えっ、全員がちゃんと生きてますけど!?」って思いました(笑)。

成井豊(以下、成井) 僕は、通行人とか、時代劇の斬られ役とか、記号にしかならない役をつくらないようにしているんですが、それはただ、役者に申し訳ないからなんですよ。ほら、映像と違って舞台は、どんなに小さな役でも、稽古と本番あわせて最低でも二か月近く拘束するでしょう。それなのに無名の役だったり、一瞬で出番が終わったりするのは、拷問だと思うので。どの役も、役者が心をこめて演じられるものにしたいんですよね。

辻村 その気遣いをもっていらっしゃるのが、素晴らしいです。

成井 気が小さいだけだと思うんだけど(笑)。でも、だから辻村さんの作品を読むと嬉しくなる。登場人物全員が、ちゃんと魅力的だから。

辻村 そういう成井さんだから、脚本に新しく書き加えてくださったシーンも嬉しかったんです。たとえば、回想…

2017/7/10

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辻村深月の『スロウハイツの神様』が舞台化! 脚本・演出家の成井豊、“ラストが圧巻”『かがみの孤城』を語る!【前編】

演劇集団「キャラメルボックス」と、作家・辻村深月のコラボレーションがこの夏、実現する。小説『スロウハイツの神様』が、脚本・演出家の成井豊の手により舞台化され7月5日から16日まで公演が開催される。辻村作品はほとんどすべて読んでいるという成井豊。高校時代に初めてキャラメルボックスを観て以来、魅せられ続けているという辻村深月。共鳴しあうふたりの作家の対談がここに実現。辻村深月の最新刊『かがみの孤城』(ポプラ社)の感想を皮切りに、それぞれ作品に対する想いなどを存分に語り合った。 ■読者の先読みをことごとく裏切り、感情のリアリティに圧倒させられる『かがみの孤城』

成井豊(以下、成井) 読みましたよ、『かがみの孤城』。いやあ、これは力作でしたね。

辻村深月(以下、辻村) ありがとうございます!

成井 ファンタジーの王道である「行きて帰りし物語」。もうだいぶやり尽くされてしまった感があったところに、この手があったか! と驚かされた。こちらの先読みをことごとく覆して展開するので、翻弄されまくりでしたよ。たとえば、主人公のこころが、せっかく異世界に誘われているのに、…

2017/7/10

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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫) / 感想・レビュー

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風眠

それぞれの登場人物が葛藤しながらぶつかり合い、そしてそれぞれの伏線が回収されていく上巻。昔の話や小さなエピソードまでもが伏線になっていて、ラストに向かって収束されていくさまは素晴らしい。前半はふたりの大きな才能によって苦悩する人物像が描かれているので、一見、成功者に見えるコウキと環の苦しみがいっそう際立って感じられる。才能あふれる人ほど自分らしく、心に忠実に生きることは難しいと思う。それでも、そういう風にしか生きられない不器用なふたりは、とても素敵だ。ミステリーでもない、ホラーでもない、これは恋の物語だ。

2012/12/04

遥かなる想い

下巻の後半、思わず涙しながら読了。なにげない伏線がラストに繋がっていく筆力・構成力は お見事。やや途中、中だるみの感があったが、環とチヨダコーキの縁には脱帽。事件の直後に百二十八通もの手紙を送った少女とコーキ…「あの頃の切なさ」が見事に読者に伝わってくる物語になっている。

2010/12/30

パトラッシュ

(承前)スロウハイツの新住人入居と宛先不明の荷物到着を契機に、散りばめられていた布石と伏線が見事に回収されていく。「コーキの天使」と謎の作家鼓動チカラの正体、環の過去と壮太や正義、すみれの苦闘などが周囲の助けを得て解決に向かう。その過程で明らかになるコーキの行動は凄まじいまでのストーカーそのものだが、上巻の「愛はイコール執着」というセリフに照応している。それに支えられて毒母の呪縛に潰されることなく環は自立し、さらに自分を高めるべく渡米の途に就く。悪人が皆無の純粋な若者たちの群像劇は、鮮やかな愛を結ぶのだ。

2021/10/03

nobby

心地よい読後感とはこのこと!小説の力、そして愛の力、自分の目で確認出来たことがコーキの復活に繋がってたんだね。それにしても、いろいろズルい(笑)いろんな正体にあたかもの伏線が示してあるから、見事に騙されてる…最終章は大好きな伏線回収の展開を満喫しながら、涙涙だった。これはまた読みたくなる作品。

2013/11/14

どんふぁん

2020年1月26日読了。わかった!辻村深月さんはスロースターターなんだな!?もう焦らしちゃって困っちゃうよ。こんなに素晴らしい結末が待ってるなんて、上巻読んだ時にはわからなかったよ。下巻も最初の方はうーんなんだけど、残り半分あたりからは怒涛の伏線回収と感動の嵐。コウちゃん大好きになったよ。特に図書館とテレビとクリスマスの話は涙なしには読めませんでした。ステキでした。なんでかな?と思ってたんよー。辻村深月さんにしてやられたー(笑)環とコウちゃんは他の話にも出てくるみたいなので、また読んでみたいと思います。

2020/01/26

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