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ポトスライムの舟 (講談社文庫)

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

作家
津村記久子
出版社
講談社
発売日
2011-04-15
ISBN
9784062769297
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ポトスライムの舟 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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zero1

自分の労働はいくら?現代を鋭く切り取った芥川賞受賞作を再読。29歳の女性ナガセはパワハラで新卒入社の会社を退職。工場勤務、カフェの手伝いなどで生活。職場で見た世界一周クルーズの163万円を貯めると決め、その後友人が娘と家に転がり込む。表面的な技巧に走ることなく日常を描く作品は退屈なようで、虚しさを含めて自分を肯定。30歳にしてこの作品が書けるのは奇跡と言っていい。文学が「人とは何か」を描くものなら、これほど文学している作品はない。日本各地で「私はナガセだった!」と共感している人がいるはず。

2019/07/01

風眠

第140回芥川賞受賞作。「低収入・非正規雇用」でも、逞しく生きる姿を描いていることが本当のテーマではないように思う。一年間必死に働いた収入が、世界一周旅行のツアー代金とほぼ同額・・・って、それってどうなの?と、自分の労働価値を見出そうと、考えたり立ち止まったり、納得できる答えを探そうと静かにもがいている姿こそがテーマなのではないかと思う。革命は起こらない、淡々と日常が過ぎてゆくだけ。その先に希望があるように感じたのは、ただの私の願望なのかもしれない。

2012/06/05

hit4papa

発表された当時は、派遣切りやワーキングプアといった問題がクローズアップされていたようで、世相を反映した作品なのでしょう。しかし、本作品は、そこに見られる悲劇に拘泥するのではなく、むしろ、日々を前向きに生きていこうという活力、そして清々しさを感じさせてくれます。

エドワード

「お仕事小説」というものがある。仕事を通じて自己実現できたらそれは無上の喜びだろう。「舟を編む」の感想で書いた通り、のめりこめる仕事に出会えた人は幸せ者だ。だが、それはほんの一握りの人。世の中の99.9%の人は、時間を売って金に換えている。ナガセやツガワのように。化粧品の工場。印刷会社の内勤。仕事なんてつまんねえよ。世界一周するお金が年収と同じって、そりゃ愕然とするわな。どんな人間にだってプライドはあるのよ。非正規雇用、パワハラ、モラハラ。「ツガワはいいな、やめられて。」このカイシャ、今の日本の縮図。

2015/10/12

hiro

最近読んだ芥川賞受賞3作品(綿矢さんの『蹴りたい背中』、川上さんの『乳と卵』、『ポトスライムの舟』)を比べてみると、偶然だが作者は関西出身の女性で、それぞれの作品の主人公は、世代、置かれている立場も違うが、不安定な状態にいる女性だということに気がついた。この作品の主人公は、工場勤務の年間手取り163万円の大卒アラサー独身女性ナガセ。年収が低く、仕事を掛け持ちしていて、付き合っている男性もいない、母と同居している主人公と、離婚した大学の同級生のロスジェネ世代の女性の生き方について考えさせられる作品だった。

2012/10/21

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