りすん (講談社文庫)
りすん (講談社文庫) / 感想・レビュー
ダリヤ
文字にされ紙に印刷されたとたんに、だれしもが本という箱の中にとじこめられてしまう。読んでいてすごくこわくなった。箱をひらいたわたしのことに、箱の中で生きているひとたちが気づき、こちらにぎろりとかおをむける。ひたすら続く会話のさきに、わたしが生きる日常の会話すら箱の中できめられたセリフのようでこわくなる。こわかったけれど、ありふれることないこのこころみ、とてもおもしろかった。
2015/03/01
zirou1984
著者の処女作『アサッテの人』から生まれたもう一つの可能性。もしくは、前作の実質的な続編でありながら近親相姦的に産まれた堕胎作。The BeatlesのTwist and Shoutのハーモニーから始まる本作は一切の地の文を排した軽量な様相を呈していながら、そこに作為への自己問答を込めた難儀な作りになっている。敢えてとしての典型的形式は、それ故としての読み方を求めない限りは紋切型として終わってしまう危うさはあるのだが、本書を自身の内面への対話として読み返すことでその真価は発揮されるものなのだろう。
2018/12/23
きょちょ
今回はかなり辛口です。デビュー作「アサッテの人」★5だっただけに一層。作者の伝えたい「アサッテ」の言葉は、そもそも無意識から出てくるから「アサッテ」であって、この作品の主人公2人のように、意識的に出してはもはや「アサッテ」ではないのだ!全てを「会話」で描くことを実験的な作品だと解釈しても、「会話」に結局「説明」が入っているので、その「実験」は失敗だ。2人が読者に、「あたしたち本当にいるのよ!」と言うのが、余計リアリティを無くすし、感心も共感もなくなる。読者に伝えたい何らかの「意志」があるのかも疑問。×××
2017/01/26
ぞしま
病室、閉じられた空間が拡がる。 それを担保するのは危うい感情のバランス、散文詩のような、でもばかげた会話、開き直り、卑小な現実……。 言葉が飛んで跳ねて踊ってる。
2019/08/28
つーさま
デビュー作の『アサッテの人』もそうであったが、この作品も声にだして読んでみたくなる。例えば、「しゃけなべいべな」とか「はっきょぉーい」という意味のない言葉を音読してみると、何だか楽しくて気持ちがいい。小説の構造や視点に着目しがちであるが、個人的には言葉そのもののの持つリズムや響きこそが諏訪さんの文章の最大の魅力ではないかと思う。聞くだけじゃ物足りない。最後、「」という呪縛から解き放たれ、言葉たちがページを飛びはねるように自由に躍りまわる、その瞬間を見逃すな。しっかり目に焼きつけろ。
2013/07/07
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