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カソウスキの行方 (講談社文庫)

カソウスキの行方 (講談社文庫)

カソウスキの行方 (講談社文庫)

作家
津村記久子
出版社
講談社
発売日
2012-01-17
ISBN
9784062770446
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カソウスキの行方 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

芥川賞を受賞した『ポストスライムの舟』といい、これといい、この人の作品のタイトルはなかなかに魅力的だ。もっとも、この「カソウスキ」は、物語の中でその謂れが語られるまでは何の事だかわからなかったのだが。てっきりロシア語か何かだとばっかり思っていた。物語のテンポは相変わらずすこぶる軽快。あまりのリアリティに、思わず笑ってしまうこともしばしば。本人(物語の主人公のイリエ)は真剣なのだから、笑っちゃいけないのだろうが。物語の舞台となっている中小企業の様子のしがなさもよく出ているし、そこでの濃密な人間関係も見事。

2012/12/31

pino

何の呪文かと思ったら「仮想好き」と書くのですね。同僚の森川を仮想で好きになろうと思うイリエがとにかくいじらしい。28歳ならもう少しキャピっとしてそうなのに浮つきがちな心を抑えようとするのは彼女の性分なのか。理不尽な目にあい心に嵐が吹き荒れてもごく自然にやり過ごしているように見える。淡々としているようで周りへの気配りもさり気なく出来るイリエ。あージリジリする。物語も後半に入るとお節介ながら森川との恋の行方も気になる。さっぱりとした筆運びの中で小物使いの上手さが光る。人間って愛おしいと思える一冊。表装も好き。

2021/02/22

dr2006

ある種の酔いを感じる。独特に流れ打たれる句読点と波打つような文、同意を求めるような倒置法のせいか・・。心情描写がとにかく生々しく、主人公イリエののたうちまわる心臓の音が聴こえてくるようで、心をえぐられ話しかけられている感覚だった。芥川賞が「ポトス」だったので、この「カソウスキ」っていうのも植物かとおもってたが、「仮想好き」を単にカナにしたものだった(笑)。読書でしか味わえない津村記久子のニッチな世界と文章を堪能できる作品。とても良かった。

2015/11/28

buchipanda3

最初タイトルを見て"カワウソ好き"って読んでた。じゃなくてカソウスキ、仮想好きだった。しかもPCの仮想メモリで、メモリ=意欲と見立てて仮想的に好きな人を拡張、なんのこっちゃだがヘンテコな発想が良い。主人公のイリエのブツブツ感もいい。彼女は自分なりに無理して真面目にやってきた。でも真面目さは時に恵まれない。そして無理だけが残る。ムキーッてなるがやっぱり真面目。だからブツブツ。そして福引の時に見せた彼女の理屈。あぁこれだ、これだよ、だから好きなんだ、津村さんの話って思った。まああの返答にはびっくらこいたけど。

2022/07/11

修一郎

「カソウスキの行方」のイリエや「花婿のハムラビ法典」のハルオなんて,その置かれた状況からしたら普通ひねくれて暴れてもよさそうなのに,そうはなっていかずに自分なりの落としどころを見つけてやり過ごすことができる,ある意味醒めた主人公たちだと思う。自分はここまで観察されたらいやだけどね。津村さんの作風を低血圧文學とか低体温文學とかいうらしい。低体温の連中が恋したらどんな感じやねん,ってこんな感じなんだろうなー…,という面白さでした。。

2017/05/31

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